花橘 その後の怪談話
発見
「それで?ソイツの特徴は?」
一旦術を解いてやれば、瞬く間に喋りだした式神を他所に、スティングは作業を進めていた。
一々関わっていると時間だけが過ぎて行きそうだからだ。
「歳は?っていうか、美人?」
「・・・。」
「なあ、どんな姫君だったんだよ!?」
だがしつこくも五月蝿い背後の存在。
まぁ、これ位の情報は先に言っておいても良いだろう。
内心大きく苛立ちながらも、スティングは素っ気無く答えてやる。
「白い肌に艶やかな金色の髪をした女子だ。」
「ふーん、金色ね。」
そりゃ良く目立つ外観だこと。
式神の言葉に、スティングはザラ邸にて施した簡単な術の事も口にした。
眠る姫君を中心に室内に描いた方陣の中、術を唱え失せた魂を呼び寄せてみたのだが?
「生憎と近場には見当たらなかった。」
出来うる限り感知の手を伸ばしてみたのだが、手ごたえはさっぱりだった。
「ってことは、相当遠くに行っちゃってるって事?」
「分からん。」
グダグダと口の達者な式神にそう言い放つと、スティングはそそくさと手を動かした。
必要となろう物の確認を終えて、先程、ザラ家より持ち出しし品を大切にその中へと追加する。
「嗚呼、もう!面倒臭~。」
正に億劫だという感じでアウルが呟く。
それを横目で睨みつつ、時が惜しいとばかりに、スティングは自分の為すべき事に集中しようとした。
そして調度品の上にあった特製の掛け布を取り、それで運ぶ品を包もうとしてだった。
この刹那!
――チリ・・・ン!
微かに耳に聞こえた知らせの音に、スティングはハッと手を止める。
――チリ・・・チリン!
これは・・・!?
先程まで感じられなかった気配が、今、微かな波動となって意識に感じられてくるよう。
間違いない!ザラ邸でかけてきた術・・・あの金色をした女子の魂を探り当てる為のモノが、確かに今
反応を示しているのだ!
「どういう事だ!?」
スティングは振り返り、その存在を求めるように室内を見渡した。
反応からして、非常に近い!
そして何度も部屋の隅々まで慎重に、何の変調も見逃さぬよう見回してみた、すると!
「・・・あれは?」
「え?」
小さな見慣れぬ物体が、視線の先、先程布を取り払った調度の上にあるのに気付く!
スティングは大きく顔を顰めた。
本当に小さな、丁度眼球程の球体をしている、その不思議な珠はだ!?
「まさか!?」
見つめた珠の中、感じた気配にスティングは目を瞠った。
いや、明らかにその球体は普通では無い、中には何かが居るのだ!
それも見事な金色の・・・。
「お前ッ!」
「え?」
「其処に置いてある水晶球は何だ!?」
思わず声を荒げ、式神を鋭く見やった。
そう恐らくは、其処にその品を置いたのはアウルであろう!
「あぁ、それさ。この間、宙を漂っているのを見つけて、あんまりにも綺麗だったから捕まえたんだ。」
「っ・・・!」
「キラキラ、実に見事な金色をしているだろ?」
だから、つい!
・・・何が、『つい』だ!?
スティングはキッと式神を睨みつけると、大仰に額へと手を当て俯いた。
全く、コイツは何をしてくれているのか?
「お前は・・・これをいつから所持しているんだ?」
「いや、いつって聞かれても?」
確か2~3日前ぐらいからかな。
至って何の感情も見えぬ式神は、淡々とそう答えた。
2~3日前といえば、そう!
「ということは、お前が全ての元凶か!」
「はぁ?」
「まさかこんな所で、お前が囲って居ろうとは!」
何処をどう探しても見つからないわけだ!
余りの事に、スティングは苛立ちが抑えきれない。
それもその筈、今の今、自分が必死で捜そうとしていた姫君の魂。
それがよもや自身の直ぐ傍、式神の手により宝玉の中に封じ込められていたのだから!
「あぁ、そっか。もしかして、探してんのってコイツだったりした?」
悪気を一切感じさせない口調とその顔つきに、スティングは大きく項垂れるしかない。
ああそうか、だからネオ様は私にこの件を勧めたのだな。
自分の能力云々ではなく、必然的とも言える采配にもまた、自尊心が深く傷ついた。
「そうだ。というか・・・惚けるのも好い加減にしろ!」
「別に、惚けてなんかないぜ?でもさ、コレ本当に綺麗で・・・惜しいなぁ。」
「良いから!今すぐにそれを渡せ!」
のらりくらりと言葉を紡ぎつつ、挙句その魂が惜しいと述べた式神に、スティングは突き刺さるような眼差しを向けた。
コイツと遣り取りをしていると、此方の気が可笑しくなりそうだ。
ちぇー、なんだよ、ったく!
そんな風に悪態をつきつつも、渋々と言った感じで珠を手渡してきたアウルに、スティングは苛々しつつも慎重にそれを受け取った。
そして掲げた珠の中、透き通り見えた一人の女の姿!
それをしかと見つめて・・・!
「今直ぐにザラ邸へと向かうぞ!」
「あぁ・・・はいはい。」
不貞腐れた感じで返事をするアウル。
そんな式神を他所に、スティングは素早く立ち上がり、そろえた荷を手にしたのだった。
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