花橘 その後の怪談話
はじまり
カタンと部屋の戸を開ける音がして、室内に居た一人の男子は、其方へとかったるい眼差しを向けた。
入ってきたのはこの屋敷の主であり、自分が従うべき者である。
「あぁ、もう帰ってきたんだ。」
そのアクアマリン色の双眸には憂鬱さ・・・とはいえ、彼は本来そういった感情を持ち合わせて居ない筈なのだが・・・が見えて、主たる男子は思わず顔を顰めた。
そしてこの悠々自適な存在に向かい鋭い眼差しを向ける。
全く、この口はどうにかならないものだろうか?
「何だ?早く帰ってきたら悪いのか?」
「だって、本当に早過ぎじゃん。」
ってか、一々絡むなよな。
嫌そうな顔つきでそんな事を述べる式神。
元より自分が使役する為に傍に置いているというのに、どうにも扱い難い奴である。
だが一々腹を立てていても時間の無駄とばかりに、主人たるスティングはフンと1つ鼻を鳴らし顔を背けた。
「中務省へ行く筈だったが、その途中で別な用事で呼ばれたのだ。」
「別な用事?」
薄い金色の双眸をした主人をキョトンと見やって、不躾な式神・・・アウルは首を傾げた。
彼の手が何かを抱えるかの如く不自然に膨らんでいるのを目にしながら。
葉月も中旬を過ぎ、そろそろ秋の風が吹いてもよい頃。
だが今年は残暑が厳しく、地方は日照り続きによる干害が酷いらしい。
祖(年貢として納められる米)の出来を大きく不安視されたお上により、陰陽頭(かしら)が占筮(せんぜい・吉凶を占う事)するよう宣旨を下されたとは聞いていたが?
「召集を受けて参内したのだが・・・その矢先、俺だけ特別に別任務を請け負って欲しいと言われたのだ。」
「へぇ。」
一応話を聞きながらも、気の無い反応をするアウルに、スティングは小さな吐息をつく。
これは目の前の存在に向けてでもあり、またつい先程請け負ってきた特別な任務に対してでもある。
そして欝な気分を晴らすべく、ゆっくりと腰を落とすと、手にしていた品を大切に脇へと置き、懐に入れてあった扇を取り出し軽く顔元を扇いだ。
「その依頼主というのが、あの『ザラ家』でな。これには流石の俺も驚いた。」
気持ち複雑な思いで、スティングは先程までの光景を脳裏に浮かべる。
いや、ザラといえば右大臣家!
今生、その名を知らぬ者など居ようか?
それ程の名家であり、また時を騒がせたる一族なのだが・・・。
「しかし、あはれと言うべきか・・・。」
正に不運続きと言っていいだろう。
自分が目にした光景に、スティングはヤレヤレと首を横に振った。
万が一に己がその立場であったとしたら、恐らくは耐えられるかどうか?
いやあの者は恐らく、並大抵の精神の持ち主ではないのだろう。
「で?一体何があったって言うんだよ?」
だが感慨に耽っていた彼へと、式神アウルは尚も粗野な言葉を投げかけた。
これにまたピクリと眉を吊り上げながら、スティング・・・現陰陽寮に属す彼は、ゆっくりと扇を扇ぎつつ口を開いたのだ。
入ってきたのはこの屋敷の主であり、自分が従うべき者である。
「あぁ、もう帰ってきたんだ。」
そのアクアマリン色の双眸には憂鬱さ・・・とはいえ、彼は本来そういった感情を持ち合わせて居ない筈なのだが・・・が見えて、主たる男子は思わず顔を顰めた。
そしてこの悠々自適な存在に向かい鋭い眼差しを向ける。
全く、この口はどうにかならないものだろうか?
「何だ?早く帰ってきたら悪いのか?」
「だって、本当に早過ぎじゃん。」
ってか、一々絡むなよな。
嫌そうな顔つきでそんな事を述べる式神。
元より自分が使役する為に傍に置いているというのに、どうにも扱い難い奴である。
だが一々腹を立てていても時間の無駄とばかりに、主人たるスティングはフンと1つ鼻を鳴らし顔を背けた。
「中務省へ行く筈だったが、その途中で別な用事で呼ばれたのだ。」
「別な用事?」
薄い金色の双眸をした主人をキョトンと見やって、不躾な式神・・・アウルは首を傾げた。
彼の手が何かを抱えるかの如く不自然に膨らんでいるのを目にしながら。
葉月も中旬を過ぎ、そろそろ秋の風が吹いてもよい頃。
だが今年は残暑が厳しく、地方は日照り続きによる干害が酷いらしい。
祖(年貢として納められる米)の出来を大きく不安視されたお上により、陰陽頭(かしら)が占筮(せんぜい・吉凶を占う事)するよう宣旨を下されたとは聞いていたが?
「召集を受けて参内したのだが・・・その矢先、俺だけ特別に別任務を請け負って欲しいと言われたのだ。」
「へぇ。」
一応話を聞きながらも、気の無い反応をするアウルに、スティングは小さな吐息をつく。
これは目の前の存在に向けてでもあり、またつい先程請け負ってきた特別な任務に対してでもある。
そして欝な気分を晴らすべく、ゆっくりと腰を落とすと、手にしていた品を大切に脇へと置き、懐に入れてあった扇を取り出し軽く顔元を扇いだ。
「その依頼主というのが、あの『ザラ家』でな。これには流石の俺も驚いた。」
気持ち複雑な思いで、スティングは先程までの光景を脳裏に浮かべる。
いや、ザラといえば右大臣家!
今生、その名を知らぬ者など居ようか?
それ程の名家であり、また時を騒がせたる一族なのだが・・・。
「しかし、あはれと言うべきか・・・。」
正に不運続きと言っていいだろう。
自分が目にした光景に、スティングはヤレヤレと首を横に振った。
万が一に己がその立場であったとしたら、恐らくは耐えられるかどうか?
いやあの者は恐らく、並大抵の精神の持ち主ではないのだろう。
「で?一体何があったって言うんだよ?」
だが感慨に耽っていた彼へと、式神アウルは尚も粗野な言葉を投げかけた。
これにまたピクリと眉を吊り上げながら、スティング・・・現陰陽寮に属す彼は、ゆっくりと扇を扇ぎつつ口を開いたのだ。
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ブログに連載している小説の一部を、此方に掲載してます。
ブログ名『LOVE SEED』
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