小説 (オリジナル)
Act:1 出会い
そこで少年は非常に困っていた。
少年が立っているのはある建物の前。日本における犯罪者を取り締まる施設とでも言えばいいのだろうか。
分かり易く言えば警視庁。
その目先の位置で少年―――神無羽澄(かんなはすみ)は立ち往生していた。
「なんつーか、入りにくいね。これは」
大人が出入りを続ける場所に、高校生である自分が一人で入っていこうというのは非常にはばかられるものがあった。
とはいえ何時(いつ)までもぼーっとしている訳にもいかない。
そう思って羽澄が中に入ろうと目線を上げた先に、少女が一人歩いていた。
「…あれって」
羽澄は早歩き気味に後ろから少女に近付いていく。
「やほー」
軽く肩を叩いて少女に挨拶?をする。
それにつられて顔を羽澄に向ける少女。
「あ、やっぱり宮野か。こんなとこでどうしたのさ?」
「…………だれ?」
顔を見て本人だと確認して再び声を掛ける。
が、当の声を掛けられた方は怪訝(けげん)な表情を浮かべるだけだった。
「あれ、違うかな。霞ヶ丘(かすみがおか)高校1-D、出席番号29番の宮野侑莉(みやのゆうり)。制服はうちので間違いないと思ったんだけどなー」
「それは合ってる。あたしが言ってるのはそう言う事じゃなくて」
「んー? まあいいや。それじゃあ行こう」
「……人の話は聞きなさいよ。だいたい、どこに行くつもり?」
再び怪訝そうに羽澄を見る侑莉。
それを気にも留めず、羽澄は微笑んで下を指差した。
「地下五階」
****** ****** ****** ******
「と、言うわけでこれから仲間入りしてくださる神無羽澄君です」
そう言って安佐田慎也(あさだしんや)は笑顔で拍手をしてみせる。
地下五階にある一室、会議室(ブリーフィングルーム)と呼ばれる部屋で、羽澄は一同に紹介された。
「……こーいうこと、ね」
その影で、愚痴(ぐち)るように侑莉が言う。
「どうかしましたか、宮野さん?」
「いえ、別に。自分の事を棚に上げる気もしますが、経験不足の子供をここに呼ぶのはどうかと思います」
「確かに神無君は貴方のような特殊な家系でもなければ、経験を積んだ熟練者という訳でもありません。ですが、その力は貴方達の誰にも卑下(ひげ)されることの無いものです」
安佐田はきっぱりと、侑莉の発言を切り捨てた。
「……納得いきません。あたしや黒沢の時だってあれだけの反対意見があったんですよ?」
「ええ、確かに我々の仕事は生易しいものではありません。ですが、この件はここにいる貴方達と、黒沢君以外は納得していることなのですよ」
ここにいるのは安佐田、羽澄、侑莉の三人を除けば四人。この施設に足を踏み入れるのは羽澄を除けば全部で二十六人だから、残りの十九人は納得している事になる。
「……いったい何なんですか、こいつ」
「凄腕の退魔師、と言ったところです」
笑顔を絶やさず、安佐田はそう言って部屋から出る。
「安佐田さん?」
それを不思議そうに見る侑莉。
「下の訓練所に行きましょう。語るより、実際に見てもらった方が早いですから。神無君もそれでいいですか?」
念のため、と確認を取る安佐田。
しかし。
「ヤです」
「……あんたねぇ」
こめかみを押さえて震える侑莉。そんな彼女を尻目に、羽澄が言う。
「僕の能力は対人向けじゃないのは安佐田さんも知ってますよね? 少なくとも、犯罪者でもない普通の人間に使っていい様な力じゃない」
「しかしですね、神無君。確かに君をスカウトしたのは私ですが、相応のものを見せないと彼女は納得しないようでして」
「………………でもなぁ」
あくまで嫌がる羽澄に、侑莉が言う。
「安心しなさいよ。あんたが井の中の蛙だって分かるだけだから」
羽澄の能力にはさして興味が無いかのように侑莉は羽澄の方を向く。
「……ま、軽い手合わせ、という事で」
努めて笑顔で、安佐田は二人に言う。
それから二時間に渡る口論の末。
「…分かりました」
最終的には羽澄が折れ、一同は地下七階の訓練場へと向かった。
少年が立っているのはある建物の前。日本における犯罪者を取り締まる施設とでも言えばいいのだろうか。
分かり易く言えば警視庁。
その目先の位置で少年―――神無羽澄(かんなはすみ)は立ち往生していた。
「なんつーか、入りにくいね。これは」
大人が出入りを続ける場所に、高校生である自分が一人で入っていこうというのは非常にはばかられるものがあった。
とはいえ何時(いつ)までもぼーっとしている訳にもいかない。
そう思って羽澄が中に入ろうと目線を上げた先に、少女が一人歩いていた。
「…あれって」
羽澄は早歩き気味に後ろから少女に近付いていく。
「やほー」
軽く肩を叩いて少女に挨拶?をする。
それにつられて顔を羽澄に向ける少女。
「あ、やっぱり宮野か。こんなとこでどうしたのさ?」
「…………だれ?」
顔を見て本人だと確認して再び声を掛ける。
が、当の声を掛けられた方は怪訝(けげん)な表情を浮かべるだけだった。
「あれ、違うかな。霞ヶ丘(かすみがおか)高校1-D、出席番号29番の宮野侑莉(みやのゆうり)。制服はうちので間違いないと思ったんだけどなー」
「それは合ってる。あたしが言ってるのはそう言う事じゃなくて」
「んー? まあいいや。それじゃあ行こう」
「……人の話は聞きなさいよ。だいたい、どこに行くつもり?」
再び怪訝そうに羽澄を見る侑莉。
それを気にも留めず、羽澄は微笑んで下を指差した。
「地下五階」
****** ****** ****** ******
「と、言うわけでこれから仲間入りしてくださる神無羽澄君です」
そう言って安佐田慎也(あさだしんや)は笑顔で拍手をしてみせる。
地下五階にある一室、会議室(ブリーフィングルーム)と呼ばれる部屋で、羽澄は一同に紹介された。
「……こーいうこと、ね」
その影で、愚痴(ぐち)るように侑莉が言う。
「どうかしましたか、宮野さん?」
「いえ、別に。自分の事を棚に上げる気もしますが、経験不足の子供をここに呼ぶのはどうかと思います」
「確かに神無君は貴方のような特殊な家系でもなければ、経験を積んだ熟練者という訳でもありません。ですが、その力は貴方達の誰にも卑下(ひげ)されることの無いものです」
安佐田はきっぱりと、侑莉の発言を切り捨てた。
「……納得いきません。あたしや黒沢の時だってあれだけの反対意見があったんですよ?」
「ええ、確かに我々の仕事は生易しいものではありません。ですが、この件はここにいる貴方達と、黒沢君以外は納得していることなのですよ」
ここにいるのは安佐田、羽澄、侑莉の三人を除けば四人。この施設に足を踏み入れるのは羽澄を除けば全部で二十六人だから、残りの十九人は納得している事になる。
「……いったい何なんですか、こいつ」
「凄腕の退魔師、と言ったところです」
笑顔を絶やさず、安佐田はそう言って部屋から出る。
「安佐田さん?」
それを不思議そうに見る侑莉。
「下の訓練所に行きましょう。語るより、実際に見てもらった方が早いですから。神無君もそれでいいですか?」
念のため、と確認を取る安佐田。
しかし。
「ヤです」
「……あんたねぇ」
こめかみを押さえて震える侑莉。そんな彼女を尻目に、羽澄が言う。
「僕の能力は対人向けじゃないのは安佐田さんも知ってますよね? 少なくとも、犯罪者でもない普通の人間に使っていい様な力じゃない」
「しかしですね、神無君。確かに君をスカウトしたのは私ですが、相応のものを見せないと彼女は納得しないようでして」
「………………でもなぁ」
あくまで嫌がる羽澄に、侑莉が言う。
「安心しなさいよ。あんたが井の中の蛙だって分かるだけだから」
羽澄の能力にはさして興味が無いかのように侑莉は羽澄の方を向く。
「……ま、軽い手合わせ、という事で」
努めて笑顔で、安佐田は二人に言う。
それから二時間に渡る口論の末。
「…分かりました」
最終的には羽澄が折れ、一同は地下七階の訓練場へと向かった。
プロフィール

- ニックネーム
- あき
- 性別
- 男です。
断固男です。 - 血液型
- A型
- 性格
- 腹黒いとか毒舌とか散々です。
他人には確かに冷たいですが、面倒見は結構いいんですよ?
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