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仮面ライダークウガ 2078最終章


第40話 嘆きの沼

ある日の夜更け、とある山中の沼の付近で2人の男性がアタッシュケースを持って何か話し合っている。
そのアタッシュケースを開けると、その中にはいくつものゾディアーツスイッチが覗いている。

「このスイッチの力で宇宙仮面ライダー部を再興させるぞ・・・!!」
「ああ。これが残された俺たちの役目だ・・・!!」

M.C.D.F.極東本部の警務局の職員に追われていたと思わしき宇宙仮面ライダー部の残党らしき2人はそんなことを話し合っている。
2人ともスイッチを押そうとしたとき、突如沼の中から触手らしきものが2人目がけて飛び出してくる。

「なっ、何だこれ!?」
「放せッ、放せェェェ!!・・・・うわぁァァァ!?」

襲い掛かって来た触手から逃れようとした2人だったが、そのまま2人とも沼の中へと引きずり込まれて行ったのだった―――。

~~~~

「確か、ここらへんで消えたって話だったな・・・」

翌日、警務局の連絡で駆け付けた保志はポツリとそう呟く。
一通り周辺を調べた後で沼の方へ向かおうとすると、たまたま近くを通りかかった子供たちが「沼に近づくと妖怪に食べられる」と保志に忠告してきた。
その後合流した警務局員からこの沼には昔から人を食べる妖怪が潜んでいるという言い伝えがあることを教えられる。
その言い伝えを利用して潜伏しているのではと睨んだ警務局員とともに保志はその沼へと向かう。

沼に立ち入ろうとした保志達だったが、そこへ沼を管理している徳山(とくやま)ソウという老人に激しく追い立てられそうになる。
いくら説明しても頑なに沼に立ち入らせようとしない徳山に、何か事情を知っているとして警務局員が連行しようとしたとき、突如沼から茶色の触手が現れ警務局員を襲い始めた。
保志は所持していたブラストシューターで応戦して触手から1人を解放するが、その間にもう1人が沼に引きずり込まれそうになった時―――

「加藤(かとう)!やめろ、やめるんだ!!」

そう叫んだ徳山がオルゴールを鳴らすと、触手は警務局員を解放するとそのまま沼に帰って行った―――。

~~~

その後、沼の調査を真魚たちに任せると保志は事情を知っていると思われる徳山に話を聞きに行った。
徳山は武力で何もかも解決しようとするM.C.D.F.がどうにかすることができるはずがないと吐き捨てる。
M.C.D.F.の職員である保志に徳山は不信感を抱いているようだったが、やがてぽつぽつと真実を話し出す。
かつて起こった、恐ろしい真実を―――。



90年前、徳山(わたし)は親友である「加藤」と共に、エネルギー開発促進センターという研究所でコズミックエナジーの研究を進めていた。
全ては人類の進歩のために。そう信じて私たちは研究に没頭していた。

だがある日、加藤は偶然にもコズミックエナジーによって人体を強化する方法を発見した。
だがそれと同時に、コズミックエナジーは使用者の心の憎悪を簡単に増幅させてしまうという恐ろしい性質も明らかにしてしまった。
必死になってその方法の危険性を訴えた加藤だったが、開発機構の上層部は人体強化法の開発促進を決定した。

そして、加藤がその実験台第一号に任命されてしまった。

上層部がその方法で利益を得ようとしたのを妨害したため、加藤を任命したのは上層部に反発している連中に対する見せしめでもあった。

やがて、必死に抵抗する加藤の体にコズミックエナジーが注入され、その姿を醜い姿に変えてしまった。

怪物となってしまった加藤は、その苦しみからか、はたまた怒りからか、私以外の研究職員と上層部を殺害した。
上層部の1人は開発が進められていたコズミックエナジーを使って作動するパワードスーツで挑みかかったが、あっさりと殺されてしまった。
その後研究機器の全てを破壊した加藤は、この沼へと逃げ込んだ。

生き残った私は、早くに妻を亡くした加藤にとって唯一の家族である娘の「ユリコ」を引き取って、加藤が潜むこの沼によく連れて行った。
上層部を止めることをできなかった私にとって、これが唯一の償いだった・・・。

だが、ユリコちゃんは事故に巻き込まれて命を落としてしまった―――。

『すまん・・・加藤、許してくれェェ・・・!!』

ユリコちゃんが亡くなった日、彼女の形見のオルゴールを手にしながら私は決意した。
私の命が尽きるその日まで、加藤の傍に寄り添って生きて行こうと―――。

「人が人を許さない限り、争いが終わることは無い・・・」

最期にそう締めくくった徳山の語る壮絶な過去に、思わず保志は言葉を失う。
すると、沼の方から低い唸り声が響き渡る。
徳山が言うには、10年ほど前からおとなしかったはずの加藤が急に攻撃的になったというのだ。

「ここって確か、10年前に基準値をはるかに超える汚染物質を排出していたことで閉鎖になった、天ノ川学園高校卒業者が経営していた工場があったところですよね」
「ああ。それで宇宙仮面ライダー部の残党が潜もうとしていたんだろう」

沼の近くで真魚と関がそう話していると、低い唸り声が響き渡る。
「気味の悪い声だぜ全く・・・」
「同感だな」
「・・・まるで苦しんでいるみたい―――」

低い唸り声を勝手についてきていた弦太朗と流星は気味悪がっている中、真魚は1人そう呟く。
そのとき、計測値を見ていた科学局員が声を張り上げる。

「沼の汚染濃度が急激に上昇していってます!!」
「何ッ!?」
「何か・・・来ます!!」

そして沼から怪物となった加藤・・・、否プロト・ゾディアーツが現れた。
姿を現したプロト・ゾディアーツは周囲に汚染物質をまき散らしながら暴れまわる。
そこで弦太朗と流星はフォーゼとメテオに変身する。

「よっしゃぁ!!さっそくタイマン張らせてもらうぜッ!!」
「お前の運命は俺たちが決める!!」
「待ってくれ!彼は、彼は生きているんだ!許してやってくれ!!」

プロト・ゾディアーツを攻撃しようとしていたフォーゼとメテオに、徳山は制止する。
しかし、有害物質をまき散らしながらプロト・ゾディアーツは暴れまわる。
それを見ていた保志は、1人叫んでいた。

「これが・・・進歩を求めて結果の・・・答えなのかぁー!!」

沈みかけている夕日を背にし、クウガが姿を現す。
クウガ目がけて触手を伸ばそうとするプロト・ゾディアーツに対し、クウガは一気にプロト・ゾディアーツに迫ると蹴り飛ばす。
連続してキックを浴びせた後、右手にエネルギーを溜めたクウガはパンチとしてプロト・ゾディアーツに放つ。
更にクウガはプロト・ゾディアーツを掴むと、反対方向へと投げ飛ばす。
追撃に入ろうとしたクウガだったが、起き上がったプロト・ゾディアーツは両手の触手を伸ばすとクウガの首と両腕を締め上げ始めていた。

プロト・ゾディアーツがクウガを締め上げている中、関の制止を振り切った徳山はいつも聞かせていたユリコのオルゴールを聞かせ始める。

「昔のお前に戻ってくれ!開発促進センターの上層部もユリコちゃんを死なせてしまった私を許してくれた、昔のお前に!!」

その言葉を聞いて動きを止めたプロト・ゾディアーツの脳裏に、かつて人間だったときの記憶が浮かんでいた。
徳山が取れてきてくれたユリコが楽しそうに遊び、成長していく様子が。

「ユリ・・・コ・・・」

触手を引っ込めたプロト・ゾディアーツがそう呟く。その悲しい声は、事情を知らないその場にいた全員の心に響いていた。
だが、汚染物質の影響は防ぐことができなかった。頭部の一部が弾け飛ぶと、先ほどまで以上に暴れ始める。

「加藤・・・!!」
「危ない!!」
「これは・・・コズミックエナジー、それとも汚染物質の影響なのか・・・?」

遂には徳山にも襲い掛かって来た触手を、とっさに真魚が庇って交わす。その際、徳山の手からオルゴールが地面に落ちる。
関は、交わしきれずに触手の攻撃を受けて吹っ飛んでいるフォーゼとメテオをガン無視しながらそう呟く。

触手から解放されたクウガは、1度触手の攻撃を受けて倒れこんだが、立ち上がるとバーニングマイティにチェンジする。
そして、両腕を前方で交差させた後、横に腕を広げてエネルギーを溜めた後に胸のコア・モノリスに腕を添えた後にL字に腕を組んで光線をプロト・ゾディアーツに放っていた。

光線を浴びたプロト・ゾディアーツは動きを止めた後、徐々に体が光となって消えていく。

『ありがとう、仮面ライダー。ありがとう、徳山。俺はお前がいてくれたおかげで、心を失わずに済んだ。これで、ユリコの元へ逝ける―――』

クウガと徳山に感謝の言葉を述べた後、オルゴールの音色が止まると同時に加藤は光となって消えて行った―――。









「加藤・・・、ありがとう・・・」

全てが終わった後、加藤のいなくなった沼で徳山は1人オルゴーを鳴らしながら加藤の写真を持ってそう呟いていた。
そんな徳山を離れた位置から見ていた保志は、徳山が言っていたことを思い出しながら同じことを呟く。

「人が・・・人を許さない限り・・・、争いが終わることは・・・無い・・・」

しかし、保志の言葉と徳山の声は決して重なることなく、森の中で響いていった―――。
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