NOVEL
プロローグ
―
カタカタッ、カタカタカタ…
薄暗い部屋の中はキーボードを叩く音が響いている。
少し神経質そうなその音は
ピタリと止んだかと思えばまたリズムよく響く。
その音の中心、発生源では青白く発光するPCディスプレイがあり、
それを一人の青年が見つめていた。
画面には数名の顔写真、プロフィール…
といったものがずらりと並んでいる。
青年はそのデータを一通り見終えたのか、
深く深く腰掛けて背を椅子に預けては
不機嫌そうに眉をその整った顔の中心に寄せた。
そして淀みのない動きでほっそりと長い指を伸ばし、
机を二度ばかり弾いた。
聞き逃してしまいそうなそのわずかな音の後。
即座に部屋にはもう一人分の気配が増えた。
画面を見つめたまま変わらず不機嫌そうな声で青年は
立っている側をちらりと見る。
「レイ、来るのが遅い。兄の呼出には素早く応対しろ。」
レイと呼ばれた青年は彼の言葉に軽く頭を下げた。
「すみません」
「…ふん、まあいい。
さて、俺がここに呼んだ理由分かるな?」
レイはそのヒントも何もない唐突な問いにチラリとPC画面を見て
「…新入生の件ですね。
他の新入生リストでしたら今しがた届いたようです。どうぞ」
言いながら一つの書類を青年に手渡す。
それを受け取ってから青年は顔色を変えずに
目線だけ動かしながらじっくりとその書面上にある情報を読みとる。
その間レイが補足する。
「遅れたのは一人だけです。
ちなみにこの書類が遅れたのは理由がありまして、
つい最近までこの生徒について先生たちで
協議を行っていたためということでした。
…それでは僕にも用事がありますから失礼させていただきます。」
そう言ってレイは書類を黙々と読む青年を残して部屋を後にした。
青年は一心不乱に書類を見る。
そして2、3度読み返してから青年は顔中に満面の笑みをたたえた。
喉の奥からは、くつくつという音が聞こえてくる。
「…やっと楽しくなってきたようだね。」
そう呟きながら青年は窓に近寄り
眼下約1200メートル先に目をやった。
青年のいる場所は空中に浮かんでいる巨大な学園都市の一角。
窓の外では巨大な竜が空を舞っている。
青年の視線の先にはこれからこの学園が
新たに高等部から受け入れようとしている新入生が滞在している。
この学園は初等部、中等部、そして高等部からなっており、
青年は初等部から在籍しているため
この風景は何度も見てきた。
そして新しい生徒を見て彼はそのたびに言っていた。
「くだらない。」と。
しかし今年はどうやら違うみたいだ。
遅れた書類に記された一人の存在によって。
先ほど青年の部屋から一人さっさと出たレイは
少しの不安と共にはるか下にいるその新入生の事を考える。
そして吹っ切れたように前を向く。
「…まぁ、僕は僕で動こうか。
僕にはやるべきことがある」
レイがそう自分に言い聞かせるように呟いたとき、
一頭の竜がレイの背後よりいきなり出現した。
遠くで竜の出現を知らせているけたたましいベルの音をレイの耳が拾う。
レイはちらりとだけ冷静な視線を投げた。
「運が悪かったね、もう少し暴れたかったんだろうけど―」
彼はそう言って片手をふるうと
今まで散々他を苦しめてきたであろう竜を、
あっけなく最期の咆哮と共に塵と化して消した。
そしてその場には再び静寂が降りた。
カタカタッ、カタカタカタ…
薄暗い部屋の中はキーボードを叩く音が響いている。
少し神経質そうなその音は
ピタリと止んだかと思えばまたリズムよく響く。
その音の中心、発生源では青白く発光するPCディスプレイがあり、
それを一人の青年が見つめていた。
画面には数名の顔写真、プロフィール…
といったものがずらりと並んでいる。
青年はそのデータを一通り見終えたのか、
深く深く腰掛けて背を椅子に預けては
不機嫌そうに眉をその整った顔の中心に寄せた。
そして淀みのない動きでほっそりと長い指を伸ばし、
机を二度ばかり弾いた。
聞き逃してしまいそうなそのわずかな音の後。
即座に部屋にはもう一人分の気配が増えた。
画面を見つめたまま変わらず不機嫌そうな声で青年は
立っている側をちらりと見る。
「レイ、来るのが遅い。兄の呼出には素早く応対しろ。」
レイと呼ばれた青年は彼の言葉に軽く頭を下げた。
「すみません」
「…ふん、まあいい。
さて、俺がここに呼んだ理由分かるな?」
レイはそのヒントも何もない唐突な問いにチラリとPC画面を見て
「…新入生の件ですね。
他の新入生リストでしたら今しがた届いたようです。どうぞ」
言いながら一つの書類を青年に手渡す。
それを受け取ってから青年は顔色を変えずに
目線だけ動かしながらじっくりとその書面上にある情報を読みとる。
その間レイが補足する。
「遅れたのは一人だけです。
ちなみにこの書類が遅れたのは理由がありまして、
つい最近までこの生徒について先生たちで
協議を行っていたためということでした。
…それでは僕にも用事がありますから失礼させていただきます。」
そう言ってレイは書類を黙々と読む青年を残して部屋を後にした。
青年は一心不乱に書類を見る。
そして2、3度読み返してから青年は顔中に満面の笑みをたたえた。
喉の奥からは、くつくつという音が聞こえてくる。
「…やっと楽しくなってきたようだね。」
そう呟きながら青年は窓に近寄り
眼下約1200メートル先に目をやった。
青年のいる場所は空中に浮かんでいる巨大な学園都市の一角。
窓の外では巨大な竜が空を舞っている。
青年の視線の先にはこれからこの学園が
新たに高等部から受け入れようとしている新入生が滞在している。
この学園は初等部、中等部、そして高等部からなっており、
青年は初等部から在籍しているため
この風景は何度も見てきた。
そして新しい生徒を見て彼はそのたびに言っていた。
「くだらない。」と。
しかし今年はどうやら違うみたいだ。
遅れた書類に記された一人の存在によって。
先ほど青年の部屋から一人さっさと出たレイは
少しの不安と共にはるか下にいるその新入生の事を考える。
そして吹っ切れたように前を向く。
「…まぁ、僕は僕で動こうか。
僕にはやるべきことがある」
レイがそう自分に言い聞かせるように呟いたとき、
一頭の竜がレイの背後よりいきなり出現した。
遠くで竜の出現を知らせているけたたましいベルの音をレイの耳が拾う。
レイはちらりとだけ冷静な視線を投げた。
「運が悪かったね、もう少し暴れたかったんだろうけど―」
彼はそう言って片手をふるうと
今まで散々他を苦しめてきたであろう竜を、
あっけなく最期の咆哮と共に塵と化して消した。
そしてその場には再び静寂が降りた。
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