第99回『ゾンビ大陸 アフリカン』

ロメロ直系、激渋ハードボイルド・ゾンビ映画

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『ゾンビ大陸 アフリカン』
(The Dead)
2010年:イギリス
監督:フォード・ブラザーズ(ハワード・J・フォード&ジョン・フォード)


 ヤコペッティ作品あるいは『狼男アメリカン』(1981年)みたいな邦題がトンデモB級系を連想させるが、これがまさかまさかのロメロ直系の渋い逸品なのだ。原題が『The Dead』とシンプル過ぎるので、邦題の付け方が難しいのは分からんでもないが、しかしもうちょっと内容に即したタイトルであれば(あるいはせめて『~オブ・ザ・デッド』的な無難なタイトルにしておけば)、素通りされる率もグンと下がるような気がするのだが……。

 邦題が示すとおり、本作の舞台はアフリカ。死者たちが蘇り、生きた人間の新鮮な肉を求めさまよい歩くようになってから早数週間。原因は全く不明(ここらへんの原因を説明しなくても観客にシチュエーションを受け入れてもらえるのだから、映画人にとってゾンビ映画ほど作りやすいものはないだろう)。そしてゾンビに咬まれた人間は案の定、何らかのウィルスに感染して同じゾンビに……もはや改めて説明するまでもないモダン・ゾンビ映画のお決まりの設定である。

 駐留米軍のエンジニア、ブライアンはアフリカを脱出する最後の輸送機に乗り込んだものの、燃料不足で輸送機が墜落。助かったのはブライアンただ一人。必要最小限の武装でアメリカ軍基地を目指す彼は、途中、息子を探すアフリカ人兵士デンべレに命を救われる。二人は協力して米軍基地を目指すが、無数のゾンビとアフリカの険しい大地が彼らの行く手を阻む。果たして彼らはこの極限のサバイバルを乗り切ることが出来るのか……。

 あらすじとしては特にこれといった新鮮味はないが、籠城戦や市街戦ではなく、アフリカの広い大地を舞台にしたサバイバルというあたりが、ゾンビものとしての新機軸と言えるだろうか。

 広大なフィールドであれば、ノロノロと歩くゾンビはあまり脅威的な存在には思えないような気がするが、しかし本作は、いつの間にやら自分の周囲に無数のゾンビが群がっている、という状況の演出がすこぶる秀逸なので、茫洋とした広い大地を舞台としながらも、「いつどこで奴らに襲われるか分からない」という緊迫感・不安感を作品全体に漂わせることに成功している。

 劇中にあまり余分な説明箇所はなく、セリフも必要最小限に留められている。主人公二人には自然と友情のようなものが芽生えるが、しかしそれとて大仰に表現されるようなことはなく、全体的なストーリー運びや人物描写はあくまで淡々としている。悪く言えば映画的・娯楽的カタルシスに欠けるということになるが、しかしながら本作には、ロメロ直系のどこまでも硬派で燻し銀な正統派モダン・ゾンビ映画としての味わい深さと、ハードボイルドな渋みに満ちている。

 おそらくかなりの低予算だと思われるが、派手な爆発やドンパチがない分、人体破壊描写などは地味ながらもけっこうリアルでエグい。

 主人公の二人があまりパニクることなく、淡々とゾンビの頭を狙って撃ち殺す(しかも極力ムダ撃ちしないように心がけている)あたりが実にプロな感じで、個人的にはかなりツボ(やたらパニクって自ら状況を悪化させるようなキャラが私はあまり好きではない。もちろん、こういう迷惑キャラがパニック映画を盛り上げる上で必要だということも分かってはいるのだが)。

 かなり絶望的な状況下で、ある種の希望が託されるラストも(決してスッキリはしないが)グッとくるものがある。

 とにかく地味で基本的に娯楽的な盛り上がりがないので、やはり万人向けとは言い難いが、ロメロ直系の硬派なモダン・ゾンビ映画が好きな人(特に「ゾンビは走らない方が好き!!」というゾンビ映画ファン)にはお薦めの一本。日々手を変え品を変え量産される玉石混淆のゾンビ映画だが、そんな中にあって本作はなかなかの拾い物だ。

 

(2014年2月15日)

プロフィール

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わがままコブラ
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男
生年月日
1984年5月2日
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