第81回『ランゴリアーズ』

地味ながら上質、娯楽映画のお手本のような逸品

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『ランゴリアーズ』
(The Langoliers)
1995年:アメリカ
監督:トム・ホランド


 本作は、スティーブン・キングの原作を『フライトナイト』(1985年)や『チャイルド・プレイ』(1988年)を監督したトム・ホランドがテレビ映画として映像化したもの。

 ロサンゼルスからボストンへ向けて飛行していた旅客機の中で目を覚ました10人の乗客たち。どういうわけか、彼ら10人を除いて、他の乗客たちは皆忽然と姿を消してしまった。消えた乗客たちの座席には、彼らが身に着けていたもの(財布や手帳や貴金属など)が散乱している。恐ろしいことには、体内に装着するもの(歯列矯正具やペースメーカー)までが残されている。一体全体、何が起こったというのか。あまりのことに呆然とする10人の乗客たち。

 そしてさらには、コックピットの操縦士までもが消えている(フライト中は自動操縦なので、飛行機自体はどうにか飛んでいる)。この旅客機に偶然乗り合わせていた操縦士によって、どうにか近場の空港に緊急着陸することに成功するが、他の旅客機の姿も見当たらなければ、無線への応答も一切なし。降り立った空港に人の姿は見当たらず、さらには空気に匂いがない上に音も全く反響しない。食堂にあったサンドイッチは味がせず、炭酸飲料の気は完全に抜け切っている。時計は全て同じ時刻で止まっており、まるで空間そのものが完全に死んでしまったかのようである。

 10人の乗客たちはどうにか自分たちの置かれた状況を把握しようと、色々と推測してみるが、確信を得られるような答えは出てこない。そんな中、乗客の1人である盲目の少女が、その不思議な能力によって、自分たちに何か得体の知れない危機が迫っていることを察知する……。

 作りとしては全体的にかなり地味だし、低予算のテレビ映画ということもあってか、特殊効果やCGに関してはかなりお粗末だ。SFミステリーとして特に斬新な展開があるというわけでもなく、突っ込みどころも少なくない。しかしながら、「これから一体、自分たちの身に何が起こるんだろう?」という好奇心と不安感が絶妙に入り交じった面白さで引っ張る演出がなかなか巧妙で、3時間という長尺でありながら、最後の最後まで飽きさせない。

 登場人物たちも(テレビということもあってか)基本的にはかなりマイルドな描かれ方をしているが、個々のキャラクター造形は割としっかりしている。第六感的な不思議な能力を持った盲目の少女や、危機対応能力に秀でたチョイワルな匂いのある頼れるタフガイ、自分たちの置かれた超自然的な状況に様々な仮説を立てる推理小説家、そしてこの手の漂流もの(あるいは広義的な意味でのパニック映画)においては必要不可欠なトラブルメイカーであるノイローゼ気味のビジネスマンといった、ストーリーを牽引していく役割を担うメインキャラたちの配し方が秀逸だ。

 登場人物たちが後ろ暗い過去や秘密を持っていたり、過酷な状況下で生まれる愛や友情も描かれるが、人間ドラマというほどの濃さ・深さ・重さはない。本作はあくまでシチュエーション重視の娯楽作と言っていいだろう。つまるところ、パニック映画としての(サバイバルな見世物としての)ドキドキ感と、ミステリー映画としての謎解きのワクワク感、この単純至極な娯楽的要素でいかに見る者の心を惹きつけられるか、というところで勝負している純正の娯楽映画だ。

 オチ自体は特に驚くようなものではないが、本作が素晴らしいのは、オチにたどり着くまでの長い長い過程そのものが、実に映画的なセンス・オブ・ワンダーとして十二分に機能しているところだ。「これから一体、自分たちの身に何が起こるんだろう?」という単純至極なドキドキ感で3時間も楽しませてくれる作品もそうあるものではない。傑作と言い切ってしまうには少し無理があるが、地味ながら上質な、娯楽映画のお手本のような逸品であることは間違いない。

 

(2013年6月22日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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