第77回『ザ・レイド』

「ドラマって何?」な問答無用の120%肉弾アクション!!

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『ザ・レイド』
(The Raid:Redemption

2011年:インドネシア
監督:ギャレス・エヴァンス


 舞台はジャカルタのスラム街。ここにそびえ立つ高層マンションには、犯罪王リヤディーが住んでいる。今回、このリヤディーを逮捕すべく、20名からなるスワット部隊が送り込まれることに。マンションの住人のほとんどは犯罪者で、おまけにリヤディーの支配下にある。

 スワット部隊の侵入に気付いた住人たちは、銃やナイフ片手にスワット部隊に襲いかかる。重要な任務だというのに、なぜか新人ばかりのスワット部隊はあっという間に壊滅状態に陥り、残ったのはわずか数名のスワット隊員のみ。絶体絶命、大ピンチ。

 主人公のラマには、彼の帰りを待つ身重の新妻が……。

 「ここで死ぬわけにはいかない!!」

 頼りは己の拳ただ一つ。スワット隊員たちの生き残りをかけた死闘が今始まる!!

 ……とまぁ、ほとんどTVゲームみたいな内容で、ドラマ性はほぼ皆無。「アクションに特化した」というよりは、本当に「アクションのみ」で描かれる約100分。

 見る前は「さすがにアクションだけだと飽きるんじゃ……」と心配したが、それは取り越し苦労というものであった。ひたすら「撃つ」「殴る」「蹴る」「刺す」「突く」「投げる」「斬る」「折る」「絞める」といった、どこまでも即物的な格闘シーンの波状攻撃で、まぁ~見せる見せる。本当の本当に「アクションだけ」なのに、全くもって飽きが来ない。

 この手のアクション押しの映画でネックになってくるのが、やはりドラマ部分の描き方だと思うが、本作にも一応それらしい要素はあるものの、しかしながら時間にすればわずか数分。本作においてドラマ要素は必要最低限の便宜的なレベルに留まっており、悪く言えば内容が浅いとか登場人物たちのキャラ造型が薄いということにもなろうが、しかし本作の売りはあくまでアクション。広告に嘘偽りなく、徹頭徹尾アクション・シーンで占められており、観客はただ次から次へとテンポよく現れる見せ場・山場をアトラクション感覚で楽しむのが正解だろう。

 ドニー・イェンの作品や、プラッチャヤー・ピンゲーオの『マッハ!』(2003年)や『チョコレート・ファイター』(2008年)などを見た時は、ドラマ部分がアクションの足を引っ張ってしまっている印象が強く、「ドラマはいいから、もっとアクションを見せてくれ!!」というもどかしさを覚えることが多かったので、本作『ザ・レイド』がその壁を飛び越えてきたのは驚きだ。

 肝心のアクション・シーンだが、近年はやたら「スタイリッシュ」と冠されるような、「カットの割り過ぎ」と「無駄にスピーディーな小細工編集」が目立つアクション映画が多いように思うが、本作にも若干はそういった部分があると言えばあるものの、全編に渡って、かなり汗臭いというか泥臭い感じの肉弾戦が多く(後半はほとんど素手かナイフでの接近戦がメイン)、カット割りも細切れにしているような印象はないし、闘っている最中の引きの画もじっくり見せてくれる。アクション俳優たちのポテンシャルを極限にまで引き出した見事なアクション演出だ。

 また、本作にはほとんどキャラ萌え要素はないのだが、唯一、犯罪王リヤディーの右腕であるマッド・ドッグと呼ばれる殺し屋が、「男気」&「中2病」キャラ全開でグッときた。背も低いし頭もけっこう薄くなり始めている「小っさいオッサン」なのだが、こいつがメチャクチャ強い上に、基本は素手で殺り合うのが好きらしく、丸腰の相手に銃を突きつけながら、「こんな小道具を使って殺したんじゃファストフードみたいでつまらん」と言って銃を捨ててしまうような、ステゴロ命のまさに梶原一騎スピリット120%なスポ根キャラなのである。

 実質、この映画でのラスボスは完全にマッド・ドッグ。作り手側もこのキャラにかなりの愛着を持っていることが分かる。最後なんかは、わざわざ主人公側を二人にさせて、「どっからでもかかってこい」状態での二対一のステゴロ勝負に出るのである。ここまでくると、もはやどっちが正義の味方だか分からない。かつて、ここまで応援したくなる悪役がいただろうか。

 とにもかくにもアクション、アクション、またアクションで攻める「真性のアクション映画」と言える本作だが、「果たしてアクションだけで映画は成り立つのか?」という、おそらく過去に幾千もの映画人たちが挑戦してきたであろうこの難題に、本作は一つの大きな成功例を提示したと言えるだろう。恋愛なし、お色気なし、美男美女キャラ一切なし。あるのはどこまでも男臭いステゴロ系アクションのみ。血と汗と固い拳が炸裂する大傑作だ。

 

(2013年5月26日)

プロフィール

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わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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