第75回『フロム・ダスク・ティル・ドーン』

ザ・中2病!! ~大人になれない男たちの挽歌~

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『フロム・ダスク・ティル・ドーン』
(From Dusk Till Dawn)
1996年:アメリカ
監督:ロバート・ロドリゲス


 銀行を襲って大金を得たら国境を越えてメキシコへ!! というのは、アメリカの犯罪映画における逃亡劇の鉄板ネタなわけだが、本作はその定番プロットに大胆にもヴァンパイアもののホラー・アクションをブチ込んでしまった、というかなり風変りな意欲作。

 兄セス(ジョージ・クルーニー)と弟リッチー(クエンティン・タランティーノ)のゲッコー兄弟は、アメリカ国内で派手な強盗殺人をやらかし、逃亡先のメキシコヘの道をひた走っていた。キチガイじみた性犯罪者で血の気が多いリッチーの厄ネタぶりにセスは手を焼きつつも、偶然同じモーテルに居合わせた元牧師のジェイコブ(ハーヴェイ・カイテル)とその娘ケイト(ジュリエット・ルイス)、そして息子のスコット(アーネスト・リュー)を人質に取り、彼らのキャンピング・カーに身を潜めてどうにか国境警備隊の検問をすり抜け、メキシコ国境を越えることに成功する。

 そしてメキシコ側の協力者を待つ間、ゲッコー兄弟は人質の親子三人を連れ、国境近くにある「ティティー・ツイスター(おっぱいクルクル)」という名の売春宿風の酒場で祝杯を挙げることに。ヒスパニック系のハクイねーちゃんたちがテーブルの上でエロいダンスを披露し、客のバイカーやトラック運転手たちはすこぶるゴキゲンに飲んでいる。ゲッコーたちも機嫌よく酒を飲み始めるが、ひょんなことから他の客と喧嘩になり、流血沙汰を起こしてしまう。

 と、ここまでだったらごくありがちな犯罪映画と言える流れだが、本作はここから一気に急展開を見せる。客どうしの喧嘩によって流れた血に興奮した踊り子やバーテンらが、突如ヴァンパイアと化して客たちを襲い始めるのである。この店は実はヴァンパイアたちの巣窟で、立ち寄った客たちを次々と餌食にしていたのだ。一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化す店内。あっちで血まみれ、こっちで首チョンパの大虐殺が繰り広げられ、まさに人間の踊り喰いといった様相を呈してくる。

 ゲッコー兄弟とジェイコブたち親子は、屈強な二人の客(演じるは『ブラック・シーザー』(1973年)や『地獄のバスターズ』(1976年)のフレッド・ウィリアムソン、そして『ゾンビ』(1978年)などの特殊メイクで知られるトム・サヴィーニ)と手を組んで、襲い来るヴァンパイアたちを次々と返り討ちにしてゆくが、しかし敵の数の方が圧倒的に多い上に、こちらには大した武器もない。このままでは、ヴァンパイアどもの餌食にされてしまうのは時間の問題だ。まさに絶体絶命、大ピンチ。果たして彼らは、この血みどろのサバイバルを生き抜くことが出来るのか!?

 どんな作品でも、昨今はネットなどからネタバレしてしまうことが多いのだろうが(当サイトもそのへんに関しては何ひとつ偉そうなことは言えないが)、私が初めて本作を見た中2の時分(1998年頃)は、まだネット環境が今ほど一般に普及していなかったので、本作も特に前情報を仕入れることなくレンタルVHSで見たのだが、完全に犯罪アクションだと思い込んでいた分、後半いきなりヴァンパイアが出て来た時にはズッコケた。

 しかし通常であれば雑なB級アクションに留まるのが関の山であろうこの強引なプロット(原案は特殊メイク出身のロバート・カーツマン)を、我らがタランティーノは実に巧いこと脚色し、それをロドリゲスがお得意の中2病全開な娯楽アクションに仕上げてみせたのはさすがだ。

 これをもしタランティーノが監督していたら、おそらく長尺のカルト作品になっていたと思うが、トニー・スコットがタランティーノの脚本を監督した『トゥルー・ロマンス』(1993年)同様、本作も良い意味での「軽さ」を持った娯楽アクションに仕上がっている(そして同時に、ロドリゲスが脚本を書いていたら、タランティーノのようなヒネリの利いた味は出せなかっただろうとも思う)。

 そんな風変りでありながらもバランスのとれた娯楽作である本作だが、作品そのものの出来の良さもさることながら、脇を固める俳優陣がこれまた実に素晴らしい。

 ハーヴェイ・カイテルが名優であるのは言うに及ばず、サルマ・ハエック、ダニー・トレホ、チーチ・マリン、バンド役でそのまま出演しているティト・ラリバ(ティト&タランチュラ)、南部の保安官役がよく似合うマイケル・パークスといった、お馴染みの面々もみな実に味わい深い。

 そして先にも挙げたフレッド・ウィリアムソンとトム・サヴィーニもオタク心をくすぐる見事なキャスティングだ(特にサヴィーニは『ゾンビ』の時と同じバイカー姿で登場し、さらには、『デスぺラード』でちょこっと登場しつつも使われることのなかった、あのチンポ型の銃を武器にしているというサービス精神あふれる役どころ)。

 しかしそんな中でも、本作におけるMVPは凶悪犯兄弟の弟役を演じたタランティーノではなかろうか。もともと俳優を目指していたというだけあって、他の作品でもなかなか達者な役者ぶりを見せている彼だが、本作での彼の演技は、「俳優タランティーノ」としては随一の仕上がりではないかと思う。主演のジョージ・クルーニーを食ってしまわんばかりの名演と言っても過言ではない。

 「ハードボイルドな犯罪アクション」+「ヴァンパイアもののスプラッター・ホラー」という、どこまでもカルトな中2病ネタを、このレベルの娯楽作に仕上げてきたというのは、やはりなかなかの技ありな逸品と言える。

 10代の頃は、いつか自分も大人になったら、こういった映画を面白いとは思わなくなるんだろうなぁ、などと漠然と考えていたが、それから早10年以上の月日が流れ、今や私も30一歩手前というところまで来たが、困ったことに、いい年こいてまだまだこの手の中2病映画からは足を洗えなさそうである。どうやら私の精神年齢は、本当に中2の時点で止まってしまったようだ。

 

(2013年4月25日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
性別
生年月日
1984年5月2日
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