第74回『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』

捨て切れぬ夢ほど愛おしい

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『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』
(Anvil ! The Story of Anvil)
2009年:アメリカ
監督:サーシャ・ガヴァシ


 フェイク・ドキュメンタリー映画『スパイナル・タップ』(1984年)を地で行くようなドキュメンタリー作品。全くの偶然なのだろうが、『スパイナル・タップ』の監督ロブ・ライナーと本作『アンヴィル!』に出てくるドラマーが同姓同名なのもちょっとびっくり。

 1980年代にはボン・ジョヴィやスコーピオンズなどと並び称されたカナダの人気ヘヴィメタル・バンド、アンヴィル。30年経った今でも現役で活動中だが、結成当時からの中心メンバーであるリップス(ギター&ヴォーカル)とロブ(ドラム)の二人は、今や腹の突き出た50代。

 若手のギタリストとベーシストを新たに加え、ライヴやレコーディングを続けてはいるものの、バンドとしての収入はほぼ皆無。二人とも妻子ある身なので、食料品の配達や建設作業でどうにかこうにか口を糊する日々を送っている。

 彼らのマネージャーを買って出た女性ファンと共にヨーロッパ・ツアーに出れば、トラブルに次ぐトラブルで、結局ここでもギャラはほとんど得られない。

 さらには、リップスが姉からの借金を製作費に充て、かつてタッグを組んでいた敏腕プロデューサーと共にニュー・アルバムを制作するが、ヘヴィメタル作品としては最良の出来であったにもかかわらず、音源を持ち込んだ先の大手レコード会社からは「時代に合わない」「今はヘヴィメタルは売れない」との理由で相手にもされない……。

 こんなことをしていて何になる?

 家庭を犠牲にしてまで、叶わぬ夢を追い続ける意味が一体どこにある?

 でも、でも、でも!!

 俺たちにとっちゃ意味がある!!

 夢がある!!!

 希望がある!!!!

 傍から見れば何の価値もないような夢を追い続ける人間の姿は、どこまでも悲喜劇的で痛々しいが、しかし自分のような凡人には到底真似出来ないような情熱の傾け方を見せられると、やはりその熱い姿を馬鹿にすることは出来なくなってくる。

 10代の頃には馬鹿にしていたスポ根的なものに、ここ最近はやたらと胸を熱くさせられるが、社会的な損得勘定が入り込めないような何か得体の知れない純粋な領域が、人間の中にもまだ生きているのだと思うと、それだけでこの無意味な世界に救いがあるように思えてしまうのだ。

 これはおそらく、社会的な損得勘定なしでもどうにか生きていける10代の頃よりも、社会的な損得勘定を嫌でも重視せざるを得なくなってくる成人以降の人生の方が、よりスポ根的な純粋な領域に救いを求めてしまうということなのではなかろうか。


 「クソみたいな人生だけど、バンドが俺を幸せにしてくれる。ミュージシャンとしての収入は得られないが、純粋な喜びを得られるから生きていけるんだ」

スティーヴ・“リップス”・クドロー

 

(2013年4月13日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
性別
生年月日
1984年5月2日
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