第70回『ビジターQ』

映画史上、最もアナーキーな家族再生の物語

img_20231228-111304.jpg
『ビジターQ』
2001年:日本
監督:三池崇史


 オープニングからいきなり父と娘がラブホで援交……これだけで見る者を激しく選ぶ本作は、三池崇史監督による超絶アナーキーな家族再生の物語である。

 テレビのドキュメンタリー作家である一家の父(遠藤憲一)は、撮影時にオヤジ狩りに遭い、カメラの前でマイクをケツの穴に突っ込まれるという大失態をやらかして以降、テレビ業界からはほとんど干されている状態だったが、今はイジメられっ子の自分の息子(武藤洵)をネタに、ドキュメンタリー作家としてのカムバックを狙っている。そのイジメられっ子の息子は、イジメっ子たちには何一つ仕返しできないが、自分の母親(内田春菊)には毎日のように暴力を振るっている。

 息子の暴力に怯える母は、その苦痛から逃避するように覚醒剤を打ち、覚醒剤を買うカネ欲しさに主婦売春にまで手を染めている。そして娘(不二子)は全く家に寄りつかず、援交で稼ぎながらその日その日を何となく生きている(カネのためなら実の父親にも平気で体を売る)。

 どこからどう見ても救いなし。社会病理の吐き溜めのごとき崩壊家庭の、不幸などというレベルを遥かに凌駕した地獄絵図。しかしそんな崩壊しきった家族の前に、謎の男(渡辺一志)が現れたことによって、家族のつながりが少しずつ再生されてゆく。

 家族の再生がテーマとはいえ、道徳・良識・品性のたぐいが完全に欠落している作品なので、この手のブラックな笑いが全くダメという人にはお薦め出来ないが、『D.O.A.』シリーズ(1999~2002年)や『殺し屋1』(2001年)が好きな人にはぜひともお薦めしたい一本だ。

 安物のデジカメ片手に二日間で撮り上げたという、いつにも増して振り切った(突き抜けた)テンションの高さに圧倒されること必至。主演の遠藤憲一もノリにノっている。

 安物のデジカメで撮った映像に、味なんてものはこれっぽっちもありゃしないが、しかしながら本作においては、安物のデジタルの画質の悪さを完全に逆手にとって、このブッ飛んだ作品に息苦しいまでのリアリティーを付与することに成功している。ここらへんの臨機応変さが、「映画職人」としての三池監督の素晴らしいところだ(撮影を担当した山本英夫は、90年代以降の日本映画を代表する名カメラマン。三池作品はかなりの本数を担当している)。

 

(2013年3月16日)

プロフィール

プロフィール画像
ニックネーム
わがままコブラ
性別
生年月日
1984年5月2日
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
ページビュー数