第67回『ヴァンパイア/最期の聖戦』

男子校映画の決定版!!

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『ヴァンパイア/最期の聖戦』
(Vampires)
1998年:アメリカ
監督:ジョン・カーペンター


 本作は今まで見てきたカーペンター作品の中で唯一、公開時に劇場へ見に行った。調べてみたら日本公開は1999年となっているので、私が見に行ったのは中3(15歳)の時分だ。たしか丸の内の東映会館だったと思うが、恥ずかしいことに母親と二人で見に行った記憶がある。中3にもなって母親と二人で映画を見に行くというのもイタイ話だが、それもよりによってカーペンター作品である。なぜ母親と一緒だったのかは憶えていないが、まぁその頃はまだ親と出かけたりすることがよくあった(両親と出歩いている際に、街で同級生に出くわしたりなんかしたら最悪だ)。

 話の舞台は現代のアメリカ。世界各地で人知れず増えつつある吸血鬼たちを抹殺するために、ヴァチカンは専属の討伐隊(ヴァンパイア・スレイヤー)を各地に雇っており、アメリカではジャック・クロウ(ジェームズ・ウッズ)率いるスレイヤー・チームが、日々吸血鬼狩りに精を出していた。ジャックは両親を吸血鬼に襲われ、吸血鬼化した父を自らの手で殺したという過去を持つ。

 冒頭、ジャック率いるスレイヤー・チームは、ニューメキシコのとある一軒家で吸血鬼狩りを決行する。スレイヤーたちは各々銃器で武装しているものの、吸血鬼を殺すにはその心臓に杭を打ち込み、さらに炎で焼かなければならない。それゆえ、いちばん手っ取り早い方法は、吸血鬼をお天道様の下に引きずり出し、太陽光で焼き殺してしまうというもの。吸血鬼映画として、本作が他の作品と大きく異なって面白い部分は、ずばりこの吸血鬼の殺害方法だ。

 本作では十字架、ニンニク、聖水などは全く役に立たない設定なので、襲い来る吸血鬼をまず銃器でズダダダッとハチの巣にして気勢を削ぎ、今度はその肉体に大きな矢をグサリと刺し込む。そしてその矢に括りつけられたワイヤーをジープのウィンチでグイグイ引っ張って、吸血鬼たちを一体一体、お天道様の下に引きずり出すという、まるでカジキマグロの一本釣りみたいな重労働をせっせとこなす。「戦闘」というよりは「作業」といった感じだ。そしてお天道様の下に引きずり出された吸血鬼たちは景気良く人体発火して真っ黒焦げになる。

 スレイヤーたちも「ヒーロー」ではなく、あくまで「作業員」あるいは「肉体労働者」といった風情で、特殊能力みたいなものも一切ないので、暴れる吸血鬼相手にワーワー手こずりながら「作業」を進めてゆく。仕事が終わった後は、モーテルに娼婦たちを呼んでの飲めや歌えやで盛大に打ち上げ。プロフェッショナルな討伐隊というよりは、粗暴な野武士の集まりといったところだ。スレイヤーたちにへんに「正義感」や「使命感」がなく、「キツイ仕事だけど実入りがいいからやってんのさ」的なやさぐれた男臭さが実にイイ感じ(このへんがやはりカーペンターらしい)。

 後半はこのやさぐれ野武士軍団vs吸血鬼軍団の壮絶な殺し合いが繰り広げられる……のかと思いきや、先の打ち上げ会場であるモーテルに、吸血鬼軍団のボスである魔鬼ヴァレック(人類最初の吸血鬼で600年も生きている)が現れ、飲めや歌えやで浮かれていたスレイヤーと娼婦たちをあっという間に皆殺しにしてしまう。その見た目の地味さからは想像もつかない魔鬼ヴァレックの強さに唖然とするしかない(というか、こんな早い段階でスレイヤー・チームほぼ全滅って……)。

 後半は、生き残ったスレイヤー、ジャックとトニー(ダニエル・ボールドウィン)の二人に、ヒヨッコの若造神父(ティム・ギニー)が合流し、魔鬼ヴァレックに咬まれてしまった娼婦カトリーナ(シェリル・リー)とトニーの切ない恋模様などを交えながら、生き残りスレイヤーズvs吸血鬼軍団の実に渋~い対決が繰り広げられる。

 予算云々の問題もあるだろうが、何もここまで地味にしなくとも……と正直思わないでもない。しかしまぁ金をかけようがかけまいが、カーペンターがメガホンをとるかぎりは、どんなジャンルの作品であれ己の燻し銀なスタイルを貫くのは間違いない。つまるところ、そこを好きになれるか否かが、カーペンター映画を楽しむ上での分水嶺になるのだと思う。本作も、ド派手なホラー・アクションを期待すると、完全に肩透かしを食うことになる。『要塞警察』(1976年)よろしく、本作においても燻し銀の男臭い西部劇を撮ろうとしているのだ。

 そんな本作で最もグッとくるのは、武骨なジャックとヒヨッコ神父の間に芽生える男どうしのドライな信頼関係。最初は互いに全く相容れない二人が、吸血鬼との闘いの中で徐々に互いを認め合うようになる。相容れない二人が共闘の中で互いを認め合うようになる、というベタベタな演出だが、これを真正面からしっかりとやり切るところが、やはりカーペンター映画の良さだと言える。

 トニーとカトリーナの恋模様に関しては演出がぶっきらぼうで、あまり印象に残るような部分がない。一方、ジャックとヒヨッコ神父の間に男どうしのドライな信頼感が芽生えてゆく様には、やはりカーペンター映画らしい味わいがしっかりと滲み出ている。

 ジャックとヒヨッコ神父が下衆な下ネタをかまし合いながら、再び男の仕事に向かうというシーンでこの映画は幕を閉じるのだが、これは男子校出身者の私としてはハタと膝を打つ名シーンである。というのも、男どうしが打ちとけ合うための最高のコンテンツは「下ネタ(猥談)」に他ならないからだ。これはおそらく万国共通のキラーコンテンツと言えるのではなかろうか。全く相容れなかった男どうしが、最後の最後で完全に打ちとけ合うシーンに「下ネタの共有」を持ってくるあたりが、やはりカーペンター映画がカーペンター映画である所以なのだ。

 

(2013年2月27日)

プロフィール

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わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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