第64回『フレンチ・コネクション2』

オッサンが走るかっこよさ

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『フレンチ・コネクション2』
(French Connection Ⅱ)
1975年:アメリカ
監督:ジョン・フランケンハイマー


 映画を見ていて好きなシーンというのは色々あるが、私は特に人が全力で走るシーンが好きである。その走る姿をカメラが並走しながら長回しで撮るようなカットに、どういうわけか妙に心惹かれるものがある。それも出来ればスポーツ的・ゲーム的なものではなく、何かを全力で追いかけている、あるいは何かから全力で逃げているという切羽詰まった状況がイイ(つまりは生身の人間の、乗り物を用いないチェイス・シーンということになろうか)。

 最近見たものだと、三池崇史『大阪最強伝説 喧嘩の花道』(1996)のラストシーンと、フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』(1959年)のラストシーンが素晴らしかった。

 『大阪~』の方は、警察に追われている主人公の一人が、逃走中、親友の祖母に往来でバッタリ再会し、その祖母から「人生はまだまだこれからや!」というようなステキな激励を頂戴する。そして「バアちゃんも長生きしいや」と言い残し、大阪の夜を呵々大笑しながら全力で突っ走るというもの。これほどまでに清々しい逃走シーンもなかなか見ない。

 もう一つの『大人は~』の方は、主人公の少年が感化院のような施設から逃げ出し、ひたすら盲目的に走って走って走って走って、そして走り切った末に海というドン詰まりにブチ当たってしまい、途方に暮れた少年が為す術なくカメラの方に振り返ったところでFinというもの。台詞一切なしの長回しなのだが、絶妙な後味を残す名シーンだ。

 他にも挙げればきりがないが、今まで見てきた全力疾走シーンの中で特に好きな一つを挙げろと言われれば、ずばり『フレンチ・コネクション2』のラストシーン。

 主人公の刑事がホシを追って全力疾走するという実に単純なシチュエーションなのだが、先に挙げた少年や青年と違い、こちらは酒で腹も出始めた中年刑事。もちろん、かっこよく走れるわけがない。痛む横っ腹を押さえ、ぜぇぜぇはぁはぁ息を切らしながら走るのである。その姿は不節制しているオッサンそのものなので、どこからどう撮ってもかっこよくはならないのだが、しかし逃げる犯人をどこまでもどこまでも諦めずに追いかけてゆく、その刑事としての執念に胸を熱くさせられる。やはりこのシーンがあることで、本作の魅力がグンと底上げされているように思う。

 前作のラストで惜しくも捕り逃がしてしまった麻薬密輸組織のボス、シャルニエ(フェルナンド・レイ)を追って、彼の本拠地であるマルセイユへと単身乗り込んだニューヨーク市警の刑事ドイル(ジーン・ハックマン)。フランス語はチンプンカンプンな上に、地元の警察もあまり協力的ではないのだが、それでもN.Y.スタイルの野獣捜査で徐々にシャルニエを追いつめてゆく。

 しかしここはマルセイユ。裏の裏まで知り尽くしたニューヨークとは勝手が違う。敵の罠に落ちたドイルは、拉致監禁された上、なんと敵の商売道具であるヘロイン漬けにされてしまう。そして完全なるジャンキーに貶められ、警察署の前にボロ雑巾のように投げ捨てられる(警察に対する見せしめでもあるのだろう)。ニューヨーク市警から預った刑事がジャンキーにされたとあっては、フランスの警察としてもメンツにかかわる。ということで、今度は警察署のブタ箱に監禁され、ヤク抜きの荒療治を強いられるドイル。さすがの鬼刑事もヘロインの禁断症状にのたうちまわる。

 こうして、一時は完全なるジャンキーにまで貶められたドイルだったが、荒療治の甲斐あってヤク抜きに成功。どうにかこうにか「こちら側」の世界に戻ってくることが出来た。さあ、こうなると敵は分が悪い。暴力上等なニューヨークの鬼刑事を本気で怒らせてしまったのだ。復活したドイルはここぞとばかりに、敵のアジトにガソリンをまいて放火(越権行為どころか立派な犯罪行為だ)。燃え盛る炎から逃げ出してきた組織の下っ端をひっ捕らえてボコボコに痛めつけ、取引の情報を力尽くで聞き出したドイルは、今度こそシャルニエを挙げるべく、最後の大捕物を展開する。

 ウィリアム・フリードキンによる1作目(1971年)が神懸かった名作なので、どうしたってその陰に隠れてしまいがちだが、しかしこちらの2作目の方も負けず劣らずの傑作と言ってよいと思う。1作目のようなザクッ、ザクッとした切れ味鋭い剥き出しのリアリティーには敵わないが、骨太な刑事アクションとしての魅力は決して前作に劣るものではない。

 恋愛なし、お色気なし、お涙頂戴なし。

 懐古趣味と言われてしまえばそれまでなのだが、やはりどうしたって1960~70年代の男臭いアクション映画には、「男心が男に惚れる」というようなかっこよさを強く感じる。本作の主人公ドイルも、スタイリッシュさはほぼ皆無なのだが、しかしながら「若ハゲでボテ腹でもやるときゃやるんだぜ!」というその男気に胸を熱くさせられるのである。

 

(2013年2月13日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
性別
男
生年月日
1984年5月2日
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