第55回『ザ・ドライバー』

武骨な無口か、傲慢な饒舌か

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『ザ・ドライバー』
(The Driver)
1978年:アメリカ

監督:ウォルター・ヒル


 男臭く骨っぽいアクション映画を撮るのが巧いウォルター・ヒルによる監督第二作目。

 主人公のザ・ドライバー【運転手】(ライアン・オニール)は、強盗犯などを犯行現場から車で逃走させるという「逃がし屋」のドライバー(本作の登場人物には個人名がない)。仕事中はもちろんのこと、普段から終始寡黙で無駄口は一切叩かず、無欲で飾り気のない静かな生活を送っている。カントリー・ミュージックを愛聴しているのが、唯一彼の人間味を感じさせるところだ。

 そんな彼を追うのはザ・ディテクティブ【刑事】(ブルース・ダーン)。勝気で傲慢で根っからの負けず嫌い。職人的な刑事の執念だとか、あるいは手柄を立てて出世したいだとかいった動機ではなく、犯罪者とのゲームに負けたくない、というその単純至極な負けず嫌いから常軌を逸した捜査を強行し、事あるごとに部下たちを困らせている。そんな彼はザ・ドライバーの尻尾を掴んでいながら、しかし決定的な証拠がないために彼を挙げられないでいた。

 「こうなりゃ現行犯で奴を逮捕するしかない!」

 業を煮やしたザ・ディテクティブは、手荒なチンピラ強盗をとっ捕まえ、ムショ送りの免除を餌にして、ザ・ドライバーの逮捕に無理やり協力させることに。彼はこの手荒なチンピラ強盗に実際に銀行を襲わせ、その逃走の依頼を受けたザ・ドライバーを現行犯で逮捕しようと画策したのだ。もちろん強奪した金は後で銀行に返すわけだが、銀行側は「刑事が仕組んだ銀行強盗」ということは知らないのである。いくら「やらせ」とはいえ、これでは本物の銀行強盗と大差ない。たかだか「逃がし屋」一人を捕まえるために、こともあろうに刑事がチンピラに銀行を襲わせようというのだから、常軌を逸した完全な越権(というか違法)行為である。

 「上層部に知れたら、クビになるだけじゃ済みませんぜ!」

 部下はこの計画に猛反対するが(そりゃ当然だ)、ザ・ディテクティブはそんな部下の胸ぐらを掴んで、「お前は俺の言うことに黙って従えばいいんだ、分かったか?」と凄んで見せる。このあまりに傲慢な負けず嫌いぶりには、部下もさすがに根負けしてしまう。

 こうして、問題ありまくりな「逃がし屋逮捕作戦」は実行に移されるのだが、こんな手荒な計画が上手くいくはずもない。結果、死者まで出すという最悪の状況の中で、ザ・ドライバーとザ・ディテクティブの熾烈な攻防戦(というか、もはやただの意地の張り合い)が展開される。

 この二人の対決にはもう一人、ザ・プレイヤー(イザベル・アジャーニ)という女博徒が絡んで(というか巻き込まれて)くる。

 本編を見る前は、女のしたたかさでもってザ・ドライバーとザ・ディテクティブを両天秤にかけ、どちらも出し抜いてしまおうとする、峰不二子あるいはパム・グリアが演じた『ジャッキー・ブラウン』(1997年)の主人公みたいな存在なのかとばかり思っていたら、実際にはそのような女傑というよりは、もっと硬派なタイプで(彼女はザ・ディテクティブに対して警察に協力する意思がないことをはっきりと示す)、どことなくザ・ドライバーと相通ずるものがある。

 実際、彼女はザ・ドライバー側に付くのだが、しかしそこに男と女の恋愛的要素はほとんど見受けられず、同性間的な「孤独な似た者どうし」の関係性に近いように思われる。予告編にはこの二人のキスシーンがあったが、本編にはそのようなシーンが見受けられなかったので、おそらく編集の段階でこの二人の関係性を「男女の仲」にまで発展させることを意図的に避けたのだろう(実際、二人が「男女の仲」にまで発展するんじゃないかと思わせるような雰囲気のシーンもあるので、予告編で見たキスシーンがその後に待っていたのではないかと思う)。

 本作は、登場人物たちの過去や背景には一切言及されない。各キャラに個人名すら与えられていない点を考えても、意図的に抒情的なドラマ性を排除していることが窺える。

 無口で必要最低限の言葉しか発さず、感情をほとんど表に出さないザ・ドライバーと、どんな相手にも決して傲慢な態度を崩さず、勝気なうそぶきや憎まれ口をのべつ嫌味なニヤニヤ顔で喋り立てるザ・ディテクティブ。面白いのは、表面的には真逆のタイプに描かれているこの二人が、その根っこの部分では実はかなり「似た者どうし」であるという点だ。

 この一見真逆の二人に共通するのは、ずばり負けず嫌いでプライドが高いこと。つまりは「男の意地」にこだわっているのである。

 ザ・ディテクティブの方はその部分を終始露見させているので、見ている方にもかなり分かりやすく彼のキャラクターが伝わってくるが(ブルース・ダーンは本当にこういう役柄がよく似合う)、一方のザ・ドライバーは感情を表に出さないので、一見すると意地やプライドといったものは連想されにくい。表面的には、何もかも完全に割り切って生きているように見えるのだ。

 しかしそんなクールな彼も、依頼者に自身のドライビング・テクニックを疑われるような発言をされた時は(無表情はしっかりキープしつつも)怒りを露わにする。

 依頼者を車に同乗させ、人気のない地下駐車場内を神技のテクニックを見せつけながら大暴走すると同時に、車(もちろん依頼者のもの)をボコボコに破壊。挙句は依頼者に向かって「お前らみたいな素人と一緒に仕事をする気はない」と依頼をきっぱり拒否するというこの上ない意地っ張りぶりを見せつける。ここらへんの大人げなさは、ザ・ディテクティブとそう大差ない。

 似て非なるではなく、非なるようでいて実は根っこの部分でかなり似かよっている二人の男の、傍から見れば実にどうでもいい「意地の張り合い」……つまりは「男の対決」を描いている。

 終始ドライなテイストの男臭さにシビレる逸品で、人を食ったような皮肉なラストも、不思議と意地っ張りなこの男二人の魅力を引き立てているように思う(周囲の人間が付いていけないほどの意地っ張りな二人には、実際このオチが最良なのではなかろうか)。ロバート・アルドリッチ監督の『北国の帝王』(1973年)などもまさにそうだが、男の意地というのは傍から見れば実に馬鹿げたものにしか思えないものの、その激突を創作として描くと本当によく映えるのである。

 

(2012年10月7日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
性別
男
生年月日
1984年5月2日
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