第40回『ストリートファイター』(1975年)

男気、哀愁、燻し銀


『ストリートファイター』
(Hard Times)
1975年:アメリカ
監督:ウォルター・ヒル


 時は1930年代、不況(ハード・タイムズ)真っ只中のアメリカ。路上ファイトのマネージャーを生業とするC調ギャンブラー、スピード(ジェームズ・コバーン)の前に、武骨で無口な旅がらす、チェイニー(チャールズ・ブロンソン)が現れる。チェイニーは負けが込んでいるスピードに、「俺に賭けてみろ」と自分を売り込む。当てのない流れ者であるチェイニーは、当面の「つなぎ」になるような、少々のまとまった金が入用というわけだ。

 もう「いい歳」なチェイニー(実際に、この時ブロンソンは54歳)を見て、スピードは「路上ファイトで稼ぐには歳を取り過ぎている」と言うが、ためしに一度戦わせてみると、なんと相手を一発でノックアウトしてみせる。こりゃあ金になると踏んだスピードは、チェイニーと組んでひと山当てようと画策。ヤク中のポー(ストロザー・マーティン)を専属医として仲間に引き入れ、ニューオリンズの路上ファイト・シーンに殴り込みをかける。果たしてこの男たちに勝利の女神は微笑むのか!?

 至ってシンプルなストーリー展開と、必要最小限のセリフの中に、男の生きざまと人生のペーソスが見事に集約された逸品。男たちが殴り合う映画には違いないが、そのケンカ・ファイトの肉弾戦にさえ、かなり抑えた演出が為され、大の男が派手にぶっ飛んでドンガラガッシャン、みたいなハリウッド的演出はほぼ皆無(だからと言って退屈というわけではもちろんない)。

 そして恋も友情も実にイイ塩梅のドライなタッチで描かれ、へんに泣かせに走らないのも何とも渋くてイイ感じ。

 チェイニーが少しイイ仲になった相手ルーシー(演じるジル・アイアランドは私生活でもブロンソンの奥さん)との別れのシーンも、全然引っ張らずにさらりと演出。武骨な旅がらすであるチェイニーよりも、定職に就いているまともな男を選ぶことにしたと言うルーシーからスッと身を離し、夜の闇の中に去ってゆくチェイニーの後ろ姿は、まさに「男の哀愁」そのものだ。

 そしてヤクザからの借金で首が回らなくなったスピードを助けるために、チェイニーは最後の闘いに挑むのだが、このシーンでのチェイニーの登場の仕方も大仰さ皆無で素晴らしい。ここでジャジャーンと派手な音楽をかけたりせず、また、「待ってたぜ」みたいな余分なセリフも一切なく、チェイニーとポーの「始めようか」「ああ」という会話に事の全てを語らせるあたりが最高に渋い。


 ブロンソンやコバーンが素晴らしいのはもちろんだが、意外にも本作ではストロザー・マーティンがかなりステキな立ち回りを見せている。ペキンパー作品その他、60~70年代のアメリカ映画でかなり個性的なバイプレーヤーとして活躍しており、どちらかと言えば嫌味な悪役のイメージが強い彼が、今回はイイ奴な役どころで、彼の「猫を引き取りに行こう」という一言で幕を閉じる。

 

(2012年5月19日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
性別
男
生年月日
1984年5月2日
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