第4回『カンバセーション …盗聴…』

壁に耳あり、心に闇あり


『カンバセーション …盗聴…』
(The Conversation)

1974年:アメリカ
監督:フランシス・フォード・コッポラ

 金と名誉と愛のためなら、人間どこまでも恐ろしくなれるということを描いたサスペンス・ドラマの傑作。これは私が今まで見てきた映画の中でも、人間の恐ろしさを描いたという点では一、二を競う作品だ。その隅から隅まで、底なしの暗さと孤独とが横溢している。

 ジーン・ハックマン演じる主人公ハリー・コールは、その筋では名の通ったプロの盗聴屋。彼にとって、盗聴する会話の内容に興味を抱くことは何よりも御法度である。深入りはこの稼業にとって命取りになるからだ。ただ盗聴し、録音し、テープを依頼主へ届けるだけ。

 そんなハリーは自身の身の上についても徹底した秘密主義で通し、相手に心を開くことがない。おかげで仕事仲間や恋人にも愛想をつかされ、人の輪の中に身を置いても常に孤独である。

 そして今回の依頼もまたいつものごとく、ただ盗聴し、録音し、テープを依頼主へ届けるだけのはずだった。がしかし、盗聴した素材をミキシングする過程で、自ら御法度を破ってしまう。盗聴したカップルの会話にただならぬものを感じ、思わず聞き入ってしまったのだ。

 そしてそこから、ドロドロとした人間たちの闇の底なし沼へと引きずり込まれてゆく……。

 最後まで先の読めない良質なサスペンス映画としての展開も見事であるが、本作の見どころは何と言っても主演のジーン・ハックマンだろう。自分以外に信じるべきものがなく、そんな自分のしていることにさえ疑問を抱き始めている男の孤独を見事に演じきっている。

 冒頭、一仕事終えてアパートの自室へ帰ってくると、そこに階下の住人から誕生日のプレゼントが届いている。ハリーはさっそく相手に電話し、プレゼントへの礼もそこそこに、どうやって自分の部屋へ入ったのか問い詰める……。他人の秘密をメシの種にしている男の日常に待っているのは、こういった周りの人間に対する疑心暗鬼だけなのだ。

 この映画には最後の最後まで救いはない。ただただ、人間の業というものを深く考えさせられるばかりである。

 

(2010年3月5日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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