第36回『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』

離れられない傷と傷


『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』
(Brothers of the Head)
2005年:イギリス
監督:キース・フルトン、ルイス・ペペ


 70年代パンク前夜のイギリスのロック・シーンに彗星のごとく現れた、結合双生児(いわゆるシャム双生児)をフロントマンにしたガレージ・バンド「ザ・バンバン」の足跡をたどる、という体のフェイク・ドキュメンタリー作品。

 主人公の双生児トムとバリーは、生まれてこの方、人里離れた岬で世間とは無縁の生活を送っていた。ところが二人が18歳になると、父は彼らを興行主のザックに売り飛ばしてしまう。ザックはこの美形のフリークスをフロントマンにしたロック・バンドでひと山当てようと画策。ロックの「見世物」としての有用性を最大限に利用しようとしたのである。

 内省的で物静かなトムと、攻撃的で常に憎まれ口を叩いているバリー。トムのこの内省的な感性と、バリーの攻撃的なパフォーマンスは、次第に独自の世界観を持ったバンド・スタイルに集約されてゆく。彼らの過激でもろい痛々しさは、パンク前夜の若者たちに受け入れられ、そのフリークな肉体を曝け出しながら暴れまわる二人は、一夜にして若者たちのニュー・ヒーローになった。

 ある日、そんな人気絶頂の二人のもとに、若い女性ジャーナリストが取材に訪れる。バリーは彼女を一目見た時から嫌悪し、いつものように攻撃的に接するが、かたやトムの方は次第にこの女性ジャーナリストに惹かれてゆき、いつしか二人は恋仲に。このことでトムとバリーの間に亀裂が生じ、兄弟の仲は徐々に険悪なものになっていく……。

 兄弟の過激なステージ・パフォーマンスは相変わらず若者たちを熱狂させていたが、しかし当の二人は次第にドラッグとアルコールに溺れ始め、底なし沼にズブズブとハマり込んでゆく……こうなれば後はもうお決まりのパターンしかない。破滅の坂道を一直線に転げ落ちていくだけである。

 徹底的なリアリズム追求型のフェイク・ドキュメンタリー作品でありながら、同時に寓話的・幻想的な雰囲気も持ち合わせており、物語は現実と夢と狂気と正気の間を激しく行ったり来たりする。

 もちろん作り手たちの技術や感性が素晴らしいのは言うまでもないが、しかし何と言ってもやはり、主演の二人、ルークとハリーのトレッダウェイ兄弟(彼らも実際に双子である)の存在がこの映画の出来の良さを決定的なものにしているのは間違いない。

 若者特有の鋭利な感性を剥き出しにしながらも、常にどこか痛々しくて物悲しい手負いの感覚に満ち溢れている。例えが古いが、どこかジェームズ・ディーン的な痛々しさを感じさせるのだ。この二人だからこそ、「一夜にしてロックスターに登りつめるシャム双生児」というかなり奇抜な役どころにも、充分説得力を与えることが出来たのではなかろうか。

 

(2012年3月19日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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