第257回『ザ・バイクライダーズ』

バイク野郎たちの苦い青春

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『ザ・バイクライダーズ』
(The Bikeriders)
2023年:アメリカ
監督:ジェフ・ニコルズ


 1960年代中頃~70年代初頭を舞台に、シカゴでバイカーズ・クラブを結成した男たちの栄枯盛衰を描く青春バイカー映画。シンプル過ぎるくらいシンプルに、無駄な贅肉を徹底的に削ぎ落としたスタイルで、ひたすら男臭い世界を描きながらも、最後の最後で男の弱さをさらっと見せる落としどころが何とも粋な、苦い青春映画の傑作である。

 実在のバイカー集団「シカゴ・アウトローズ・モーターサイクル・クラブ」と、そのメンバーたちの日常の姿を捉えた、写真家ダニー・ライオンによる写真集『The Bikeriders』(1968年)から着想を得て作られた本作だが、おそらく当時のアメリカン・バイカー史の変遷のようなものを、一つの架空のバイカーズ・クラブの物語に集約させて描いているような節も本作にはありそうだ。

 トラック運転手のジョニー(トム・ハーディ)は、バイカー映画の名作『乱暴者(あばれもの)』(1953年)をテレビで見て感化され、バイカーズ・クラブ「ヴァンダルズ」を結成する。当初は少人数のチームで、荒っぽい不良の集まりだが、メンバーは皆それなりに大人の労働者や妻子持ちでもあり、バイクを転がしては地元のバーでたむろする愛好会ぐらいの落ち着いた存在であった。

 しかし彼らに敵愾心を持つ者や他のバイカー・チームとの暴力沙汰が増え、さらには本拠地シカゴ以外にも支部を増やしたことで、時代の流れと共に、西海岸のヒッピー系バイカーやベトナムでドラッグ漬けになった帰還兵たち、あるいは荒んだ環境で育ったチカーノ系の不良少年らなど、初期メンバーとは全く違うタイプのアウトローたちもヴァンダルズに流入して来るようになり、次第に組織内の風紀や統制が乱れ始め、いつしか創始者ジョニーの手にすら負えぬ状態に陥ってしまう。

 当初は組織立ったギャング集団ではなく、あくまで古い掟を守る任侠的な不良バイカー集団だったところに、次第にドラッグ・ビジネスも殺しもお構いなしの愚連隊的な若手世代が流入し始めたことで、ジョニーをはじめとする創始者たち古い世代は急速に衰退してゆく。

 この栄枯盛衰の苦い青春物語を、ヴァンダルズの中心人物の一人であるベニー(オースティン・バトラー)と結婚したキャシー(ジョディ・カマー)の「冷めた女目線での回想録」として捌いている点が、作品全体のバランスの良さに繋がっている。どこまでも男臭い物語を冷めた女目線から語ることで、独特の乾いた客観性というか距離感のようなものが生まれ、甘ったるい男のロマン語りに偏らぬその硬質さが、本作の質を全体的に底上げしている。

 話の本筋は、今日日ここまで男臭さだけを煮詰めたような物語が他にあるか? というくらいホモソーシャル全開な「男の世界」を描いており、ヴァンダルズ創始者のジョニーと、ニヒリスティックな狂犬であるベニーとの濃厚なブロマンスがその中心となるが、そんなどこまでも男臭い世界で「男の意地」を貫こうとする彼らが、終盤でさらっと男の弱さを見せる流れとなる点が非常に面白く、ここに先述した「冷めた女目線での回想録」という語りの形式が効果的に活かされてくる。

 終始淡々とした乾いたタッチで、大仰なエモーショナルさで煽るようなこともなく、劇中で描かれる暴力描写も直接的あるいは派手な表現はほとんど皆無に等しいのに、その淡々とした乾いたタッチで描かれる死や暴力の「呆気なさ」に宿る硬質なリアリズムが見事である。

 男臭いロマンチシズムを描くのに「情熱」というフィルターを通さない、どこか冷めた怜悧なタッチが、何とも言えぬクールさとバランスの良さを生み出している。男が「男の意地」を通し切れなかった先にある苦い青春物語の落としどころに、粋な気品とでもいうようなものを感じる逸品だ。去りゆく時代と共に散っていく男たちの儚さが、乾いた排気音と共にいつまでも胸の奥に響く。

 

(2024年12月1日)

プロフィール

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わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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