第246回『呪いの黙示録 第七章』

『呪いの黙示録』シリーズの一つの到達点(完成形)

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『呪いの黙示録 第七章』
2022年:日本
監督:寺内康太郎


 単発の投稿動画三本と、調査パート(ある種のドラマ・パート)前後編二本の、計五本を交互に配し、一時間前後にまとめて一作品(一章)とする。これが本シリーズの主たる構成の特徴だ。作品の本筋と言える、スタッフたちによる調査パート(ドラマ・パート)に関しては、シリーズのほとんどを担当する寺内康太郎監督の心霊ドキュメンタリーの名手としての手腕が遺憾なく発揮された、面白いものばかりである。『境界カメラ』(2018年~2019年)や『心霊マスターテープ』(2020年)で見せてきたその名手ぶりを、本シリーズにおいても存分に堪能することが出来る。

 しかしながら、シリーズを通して悪手だなと思えるのが、単発の投稿動画三本と、出来の良い調査パート(ドラマ・パート)の双方が一本の線で繋がるような作りになっておらず、完全に乖離したような状態であることで、この点だけはどうしても総合的な評価を下げる欠点だと思って本シリーズを見続けてきた。この点だけが本シリーズにおける「玉に瑕」だとハッキリ言える。

 そんな中で見た『第七章』は、この「玉に瑕」の部分が見事に解消されていた。単発の投稿動画三本に、調査パート(ドラマ・パート)の前後編二本の計五本という構成は従来と全く同じだが、今回はそれらが全て「ひとりかくれんぼ」という一つの題材によって貫かれ、先述したような乖離も感じさせず、しっかりとした連続性を持った「一本の作品」としての明確さが際立っている。

 「ひとりかくれんぼ」に関する膨大な量の投稿動画の中から、スタッフはある投稿者の女性が少し変わった(当初の目的とは違った)「ひとりかくれんぼ」のやり方をしていることに注目し、さっそくこの女性を探し出しコンタクトを取ると、ネットを介して通じ合ったソウルメイトのような親友が亡くなったために、生前に直接会うことが出来なかったその親友を、「ひとりかくれんぼ」の儀式を利用して呼び出そうと試みていたことが女性への取材から判明する。

 スタッフたちはこの女性の名も知らぬ親友の身元を調査し、投稿者の女性と共に彼女の親友の人間像とその死の真相に迫ってゆくが、そこにもまた「ひとりかくれんぼ」にまつわる恐怖と悲哀に満ちた、一人の孤独な女性の人生模様が浮き彫りになってくる。

 今作は単発の投稿動画三本も本筋のドラマを補足する形で、「ひとりかくれんぼ」が一歩間違えるといかに危険な状況を招いてしまうかを伝える役割を担っており、その容赦ない恐怖と残酷とショック描写の連続により、作品全体の質を底上げしている。

 「ひとりかくれんぼ」という、ある種の降霊術を軸にした二人の若い女性の悲劇的な友情ドラマを、事件の真相に迫る調査の中から徐々に浮き彫りにしてゆく……という流れのシリーズ屈指の名編で、「調査もの」×「人生ドラマ」の面白さを怪異と恐怖の中で捌いてゆく寺内康太郎独自の手腕は、本作において益々冴え渡り、ある種の現代人情噺としても抜群の仕上がりだが、そこからさらに人間の業や因果な悲哀に満ちた、破滅へと至る地獄の一本道も容赦なく描破してゆく。

 そこにあるのが善意か悪意かに関係なく、人と人が出会うことそれ自体から自然発生的に生まれてしまう呪いや怪異の恐ろしさと人生の無常観を描き、ベタな泣かせの人情ものとドヨンとした厭さを融合してみせるその匙加減が、憎らしいほどに絶妙である。

 親友の死の真相を知り、ショックと悲しみで泣き崩れた投稿者の女性が、その後、憑き物が落ちたようにスッキリした様子でポジティブな笑顔に変わり、そこから以前にも増して危険なやり方で「ひとりかくれんぼ」にのめり込んでいく恐ろしさは、見ていてめまいを覚えるレベルだ。

 悪霊や怪異も恐ろしいが、それ以上に、生ある生身の人間が、自ら死の世界の方へのめり込んで行ってしまうその精神性に、救いなき残酷なドラマが成り立つ。

 

 何と面白く、何と恐ろしく、何と哀しい人間ドラマであろうか。

 憎しみとは全く正反対の優しさや慈悲、そういった清く美しいはずの想いの強さが、時として哀しい悲劇や凶々しい呪いを生み出し、得体の知れぬ悪霊たちを引き寄せてしまう。憎悪や嫌悪のみならず、前向きに生きることや愛することさえ、呪いや怪異を生み出す要因となる。この人間臭い因果な不幸の中に、何とも歪で感動的なドラマ性が宿る。

 寺内康太郎はその歪さを徹底的に追求する。人間の優しさの向こう側にある救いなき闇を、どこまでも拡張させて我々に見せつけようとする。寺内康太郎とは、そんな実に恐ろしいストーリーテラーなのだ。そしてその語り口の闇の深さに、私は抗いようもなく魅了され続ける。

 

(2024年2月20日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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