第229回『オーロラの彼方へ』

父と息子の超時空走査線

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『オーロラの彼方へ』
(Frequency)
2000年:アメリカ
監督:グレゴリー・ホブリット


 『真実の行方』(1996年)、『悪魔を憐れむ歌』(1998年)のグレゴリー・ホブリット監督による、変り種の時空SFドラマ。派手さは一切ないものの、ヒネりの利いたSF要素、スリリングなサスペンス要素、普遍的な家族ドラマの要素を器用に編み込んだ、技ありの逸品だ。

 1999年、太陽フレアの影響でニューヨークの空にオーロラが現れる。30年前の1969年にも同様の異常現象が起こった。刑事のジョン(ジェームズ・カヴィーゼル/現:ジム・カヴィーゼル)はある晩、自分がまだ幼い頃に死んだ父の遺品であるアマチュア無線の機器を発見し、懐かしさから電源を入れ、しばらくいじっていると、アマチュア無線愛好家らしき人物と通信が繋がる。

 そして何となく親しみを覚えるその相手としばらく会話を楽しんでいると、どうやらそれが1969年当時の父親フランク(デニス・クエイド)であるという驚きの事実が判明する。最初はお互いに全く信じられない状況であったが、親子の間でしか知り得ないことを喋ったり、また未来のジョンにしか知り得ない大リーグの試合結果などを詳細に言い当てたりしていく中で、ジョンと父フランクは自分たちの間に信じられない奇跡が起こっていることを信じざるを得なくなる。

 過去の父と未来の息子はこの奇跡を純粋に喜び、夜通し語り明かすが、ここで一つ大きな問題が……。それは、ジョンが生きる未来では父フランクは既に死んでおり、その死因は1969年当時、消防士であったフランクが職務中に殉職したためなのだ。当然ながらジョンはこのことを黙ってはいられず、父フランクが死を回避出来るようにアドバイスをする。フランクも半信半疑ではあったが、実際の火災現場でジョンの言葉が頭をよぎり、どうにか火災現場での殉職を免れる。

 こうして、幼い頃に失った愛する父フランクとの「あったかもしれない」人生を取り戻したジョンであったが、大胆に過去を書き換えてしまったことで、予想外の新たな不幸がジョンを襲う。彼が父フランクの命を救ったことで、いくつもの偶然の重なりに変化が生じ、1969年当時に起こって1999年の時点でも未解決のままであった連続殺人事件に、なんと母親が巻き込まれ殺されてしまうのである。この思ってもみなかった大誤算をどうにか修正しようと、1999年の刑事であるジョンが捜査資料を基に1969年の父フランクに指示を出し、フランクを犯人よりも先回りさせて、母を含む新たな被害者を出さぬよう、過去と未来の両方から犯人を追い詰める超時空の共同捜査を開始する。

 タイムワープというSF要素を用いて、「あったかもしれない未来」の良い結果と悪い結果を対比的に見せる寓話的人情ドラマとして見れば、やはりアメリカなので『素晴らしき哉、人生!』(1946年)の流れを汲む作品かと思えるが、本作が面白いのはそこからさらに、タイムワープ的に過去と未来を跨いだ捜査もののサスペンス・スリラーとして展開させるという、かなり大胆な映画的ツイストを見せる点だ。まさに「一粒で二度美味しい」タイプの重層性で最後まで楽しませてくれる。

 既に起こってしまった犯罪を過去に戻って未然に防ごうとする、というアイディアは『タイムコップ』(1994年)のそれに等しいが、しかし本作の妙味は、未来の刑事であるジョンが過去の現場にタイムワープし、若き日の父フランクと共闘するわけではなく、過去の父と未来の息子があくまで一台の古い無線機によってのみ(声=会話によってのみ)繋がっている、という点にある。

 過去の父フランクは消防士なので、捜査や犯人逮捕のノウハウは全くない。それは全て刑事である未来の息子ジョンが無線機を介して指示を出すしかない。この設定は、分け隔てられた二つの空間で共同捜査が行われるという内容のサスペンス・スリラーとして、非常に良く活きてくる。

 さらには、タイムワープものとしての、「あったかもしれない未来」をどんどん良い結果の方に作り変えていこう、という父と息子の共同作業が上手く転がるに連れ、最初は無線機を介してしか繋がれなかった過去の父と未来の息子が、最終的には「今」を共に生きる者どうしとして「再会」することになり、ここを自然な流れとして見せている点も巧みだ。親子二人の決死の共同捜査を描くサスペンス的仕掛けが、そのまま「家族再生」のドラマ的叙情性へとスムーズに繋がっていく。

 『悪魔を憐れむ歌』もツイストを利かせた変り種の作品だが、そのツイストがそこまで映画的魅力を生んでいるとは思えず、対してこちらの『オーロラの彼方へ』は、人情的な家族ドラマの要素と捜査もののサスペンス・スリラーの要素が、見事に時空SFというフォーマットの中で活き活きとスパイラルに作用し合って、映画的魅力・娯楽的魅力に富んだ傑作となった。

 「ちょっと変り種の面白い映画」として人に気軽に薦められる作品があるとすれば、本作は間違いなくその部類の作品だ。そしてまた、「娯楽映画とは何ぞや」という問いへの一つの良い回答にもなり得る作品だと思える。派手さのないマイルドな作品ながら、妙に心に残る一本である。

 

(2023年3月4日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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