第207回『トゥルー・ディテクティブ/シーズン1』

激渋ハードボイルド・サイコ・サスペンス

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『トゥルー・ディテクティブ/シーズン1』
(True Detective / Season 1)
2014年:アメリカ
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ


 全8話で構成された刑事ドラマで、シーズン2以降も製作されているが、各シーズンで登場キャラも物語も全く別物。本作シーズン1は、以前からネット上で良い評判を耳にしていた。作家のニック・ピゾラットが原案と脚本を兼ね、全8話の監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。

 舞台はルイジアナの州警察殺人課。

 巨大ハリケーンによって過去の捜査書類が失われたという理由で、17年前に有名な猟奇殺人事件を解決した2人の元刑事、マーティ・ハート(ウディ・ハレルソン)とラスト・コール(マシュー・マコノヒー)が過去の捜査に関する聞き取りで(別々に)呼び出される。

 マーティとラストは殺人課の相棒どうしであったが、事件解決後に仲違いし、今はどちらも刑事をやめて、マーティはしがない探偵、ラストはバーで働くアル中になっている。本作はこの主人公2人への聞き取りの様子を交差させながら、2人の出会いから事件の捜査内容、私的な付き合いの状況、そしてなぜ2人の仲が決裂するに至ったのかまでを、過去の回想シーンをメインにたどってゆく。

 典型的な田舎育ちで俗物のマーティと、屈折したペシミストのラストによる凸凹コンビの刑事ドラマで、派手なアクションはほとんどなく、地道な頭脳捜査で事件の真相に迫る刑事2人の執念を、どこまでも渋く渋く作り込んだハードボイルド・サイコ・サスペンスだ。

 一つの猟奇殺人事件を追う中で見えてくるアメリカ南部の地方都市の闇と、ハードな刑事生活の中で転落してゆく男2人のミドルエイジ・クライシスが、静謐なタッチで淡々と描かれる。

 全8話という少ない話数の中で、過去と現在を交差させながらサスペンスフルに展開していく構成が見事で、事件の謎と主人公2人の人間性、関係性、個々の背景を徐々に明らかにさせつつ、回想形式で過去の事件をさかのぼる流れから、終盤3話くらいでは現在の物語へとシフトし、ハードな刑事生活の中であらゆる大切なものを失ってきた男2人が、最後に「やり残した仕事」を全うすることで自身の人生を取り戻そうとする敗者復活の物語へと昇華されていく。

 典型的な凸凹コンビのバディもの刑事ドラマとしての軸がまずしっかりしており、これは脚本や演出の良さもさることながら、キャスティングの妙味でもある。田舎育ちで古い価値観を持った俗物のマーティにウディ・ハレルソン、頭脳明晰で捜査や取り調べの腕は超一流だが、屈折した悲観主義者でアル中のラストにマシュー・マコノヒーという配役は見事としか言いようがない。

 全くタイプの異なる2人で、マーティが「陽」ならラストは完全なる「陰」だ。

 ラストは過去に幼い娘を亡くしてから結婚生活が破綻。麻薬課の潜入捜査官時代に身も心もボロボロになり、その果てにルイジアナ州警察の殺人課に流れ着いた。自殺願望はないものの、厭世的で屈折した悲観主義者で、刑事の仕事にのめり込むこと以外には何もない。家具の一切ない部屋に犯罪心理学の本と捜査資料だけが置かれているような生活だ。

 一方のマーティは妻子もあり人付き合いもよく、ラストに比べれば幸せそうに見えるが、やはり彼もハードな刑事生活の中で徐々に家庭にヒビが入り始めている。

 2人は共に一つの猟奇殺人事件を捜査して行く中で、あらゆる大切なものを失い、その果てに仕事も家庭も、そして2人の仲も破綻する。陰と陽の関係でありながら、一蓮托生で堕ちていく。そしてそこから長い年月を経ての再会があり、2人はまた共に「やり残した仕事」に臨むこととなる。

 『刑事マディガン』(1968年)、『L.A.大走査線/狼たちの街』(1985年)、マイケル・マン版『レッド・ドラゴン(刑事グラハム)』(1986年)、『ゾディアック』(2007年)、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007年)、『マーシュランド』(2014年)といった作品に通ずる要素や雰囲気を本作には感じるが、サイコ・サスペンスを描くハードボイルドな刑事ドラマの傑作であると同時に、ミドルエイジ・クライシスのど真ん中を堕ちていく男2人の敗者復活ドラマの傑作でもあり、そのバランスの良さと面白さは唯一無二である。

 

(2022年6月2日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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