第202回『ヒューマン・キャッチャー』

B級ホラー的ケレン味の先にある神話性

img_20231228-154524.jpg
『ヒューマン・キャッチャー』
(Jeepers Creepers 2)
2003年:アメリカ
監督:ヴィクター・サルヴァ


 『ジーパーズ・クリーパーズ』(2001年)の直接的な続編で、監督・脚本も同じヴィクター・サルヴァが続投しているのだが、同じ監督でここまで作品が変わるものかと驚かずにはいられない。

 前作『ジーパーズ・クリーパーズ』は、1980年代的なB級ホラー映画のテイストをそっくりそのまま再現したかのような趣向で、それ自体は味があるのだが、しかしながら演出の尽くが悪手に思える出来で、特に恐怖演出に関しては全く恐くないという有り様の作品であった。

 が、そのすぐ後日を舞台にした2作目『ヒューマン・キャッチャー』は、撮影も演出も前作とは段違いに向上しており、ホラー映画、スラッシャー映画というよりは、ある種のモンスター・パニック映画として傑出した作品と言える。

 23年に一度、23日間だけ地上に現れては、人間たちを喰らいまくる悪魔のような謎の怪物。前作ではこの怪物が地上によみがえった直後の惨劇が描かれたが、続編である本作では、その後日の22日目・23日目(つまり怪物が地上で暴れまわる最後の2日間)が描かれる。

 話の筋は二つで、冒頭で我が子を怪物にさらわれ、怪物への復讐を誓う農夫の話と、スクールバスで遠征試合からの帰路に着く高校のバスケットボール部の面々が怪物に襲われる話である。この二つの筋を終盤で一つに合流させるという非常にシンプルな構成で、話の規模としては前作よりも小ぢんまりしているのだが、画作りの美しさやかっこよさ、クリーチャー造形、ホラー映画及びモンスター・パニック映画としての恐怖演出やアクション演出、ユーモア、そして登場人物たちの立ち回りや個々のキャラ造形等々、あらゆる面で前作より遥かに質が向上している。

 前作では、話の舞台を「路上」→「怪物の棲家である廃屋の教会」→「田舎道のダイナー」→「警察署」と展開していったが、本作では話の舞台の8割くらいは足止めを食ったスクールバスの中とその周辺で展開される(つまりある種の密室劇・篭城劇と言える)。

 序盤・終盤・エピローグでのみ子供の復讐を誓う農夫が登場するが、物語の大半を担うのはスクールバスでの密室劇となる。「移動」のほとんどない作品ながら、ワンシチュエーションのパニック映画として、ダレ場もなく終始飽きさせない。

 見たこともない怪物に襲われた高校生たちが、密室と化したバスの中で見せる共闘と仲間割れは、数ある篭城劇の傑作群に劣らぬ面白さで、それだけでも娯楽映画として十二分に満足させてくれるのだが、終盤、さらわれた息子の復讐を誓った農夫が合流してからは、モンスター狩りのバトル・アクションへと変貌し、さらに娯楽映画としてのケレン味が突き抜けた面白さとなる。

 案山子の杭などを地面に打ち込むための杭打ち機を改造した、ガス圧でワイヤー付きの銛を発射するオリジナルの武器をピックアップトラックの荷台に取り付けた怒れる農夫が、勝ち目など全くないと思われた怪物相手に真っ向勝負を挑む終盤は、こちらのハートも一気に熱くさせられる。

 そしてこの農夫と怪物の死闘の果てに描かれるエピローグがこれまた素晴らしい。ネタバレになるので詳細は控えるが、このエピローグによって、モンスター・パニック映画の傑作である本作に、さらに神話性のような奥行きと厚みを持たせることに成功している。

 B級ホラーの娯楽的旨味・ケレン味を凝縮させた果てに神話性のような領域にたどりつく……という点においては、『ハロウィン』(1978年)、『ザ・フォッグ』(1979年)、『クリスティーン』(1983年)といったジョン・カーペンター作品に通ずるとも言えるだろう。

 

(2022年1月23日)

プロフィール

プロフィール画像
ニックネーム
わがままコブラ
性別
生年月日
1984年5月2日
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
ページビュー数