第157回『ラストマン・スタンディング』

メリケン用心棒 皆殺し無頼

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『ラストマン・スタンディング』
(Last Man Standing)
監督:ウォルター・ヒル
1996年:アメリカ


 ハードボイルド・バイオレンスの名手ウォルター・ヒルが、黒澤明の『用心棒』(1961年)を1930年代のテキサスを舞台にした西部劇風バイオレンス・アクションとしてリメイクした一本。本家『用心棒』も、その非公式リメイクである(東宝から訴えられた)セルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』(1964年)もどちらも大好きだが、どこまでも乾いたハードボイルドさと情け容赦ないバイオレントさという点で、私は『ラストマン・スタンディング』が先の二本よりも好きである。

 話の筋はほとんど本家『用心棒』と同じ。

 主人公のならず者(ブルース・ウィリス)がメキシコへの逃避行中にテキサスの小さな町に流れ着く。そこでは二組のギャングが対立しており、法などないも同然の状態で荒廃しきっている。ならず者は自ら「ジョン・スミス」と名乗り(当然ながら偽名)、この状況下で自身のガンマンとしての腕前を利用して上手く立ち回り、カネを稼ごうと画策する。

 話の起承転結や各キャラクターの立ち位置・関係性といった屋台骨の部分に関しては、本家『用心棒』にあったものをそのまま踏襲し、その点で特に目立ったオリジナリティーがあるわけではないが、その分、肉や皮の味付けで見事にウォルター・ヒルらしいハードボイルドさとバイオレントさに満ちた渋い渋い傑作アクションに仕上がっている。

 全体的な雰囲気としては同じヒル監督作『ダブルボーダー』(1987年)に近いタフさとバイオレントさを感じるが、ハードボイルドな渋さはさらに濃く深く煮詰められている。

 主人公が二丁拳銃をバンバン撃ちまくる様は、他のヒル作品のアクションとは少し異質な印象を受けるが、おそらく80年代~90年代のジョン・ウー作品の影響なのかもしれない。ジョン・ウー作品のガン・アクションをロバート・ロドリゲスが真似すると熱気むんむんラテン・テイストの『デスペラード』(1995年)になり、ウォルター・ヒルが真似すると乾いたハードボイルド・タッチの『ラストマン・スタンディング』になるといったところか(逆にジョン・ウーが90年代アメリカ映画らしいハードボイルドさで撮ってみせたのが『ハード・ターゲット』(1993年)であるとも言える)。

 まず何より本作はハードボイルド・タッチのバイオレンス・アクションとして、ヒル監督らしい旨味が見事に作品に反映されていて(残念ながらそうでない作品もある)、70年代からの彼の作品に見られる渋さ・ハードさ・タフさ・クールさといった味わいが、90年代のアクション映画として古びることなく再構築されているのが素晴らしい。

 当時の若々しいフレッシュさで言ったら、やはり同時期の『デスペラード』の方が上かもしれぬが、90年代当時すでにベテランであったヒルのハードボイルド・バイオレンスの名手として培ってきた重厚さが、90年代的アクションのスピーディーさと見事に調和している。

 当時、役者として乗りに乗っていたブルース・ウィリスの抑えた演技も素晴らしい。売れ線のハリウッド大作とは違う方向性の演技(例えば『パルプ・フィクション』(1994年)や『12モンキーズ』(1995年)や『アンブレイカブル』(2000年)といった作品で見せた演技)を本作でも見せ、タフでワイルドな悪党の色気を前面に押し出しつつ、望まぬ不幸を背負わされた女をついつい損得勘定抜きで助けてしまう、という魅力的な主人公を好演している。

 『用心棒』で仲代達矢が演じたキャラにあたる敵役を演じたクリストファー・ウォーケンも素晴らしい。過去に顔を何度も切りつけられ、喉をアイスピックで刺されたのでかすれた声しか出ない……という敵役として150点の容貌。そして邪魔者は誰であろうと容赦なく得物のマシンガンでハチの巣にする冷酷さ。主人公を食ってしまうレベルの魅力的な敵役が出て来る映画に傑作は多い。

 他にも、ブルース・ダーンやウィリアム・サンダーソン(『ブレードランナー』(1982年)のJ.F.セバスチャン役が有名)といった渋い俳優陣が脇を固め、90年代作品でありながら、どこか70年代的な雰囲気も醸し出しているが、そうかといって(90年代当時の作品として見て)決して時代錯誤な古臭さを感じさせる作品というわけではない。どこまでも70年代的な匂いの強いヒル監督作品にあって、ここらへんのバランス感覚はかなり上手くいった方ではなかろうか(近年の『バレット』(2012年)や『レディ・ガイ』(2016年)は、残念ながらヒル監督の感覚とゼロ年代以降の映画の感覚に大きなズレを感じざるを得なかった)。

 『ストリートファイター』(1975年)、『ザ・ドライバー』(1978年)、『ウォリアーズ』(1979年)、『サザン・コンフォート』(1981年)、『ダブルボーダー』(1987年)といった作品で見られるヒル監督らしいハードボイルド・バイオレンスの名手としての旨味を、90年代アクションの枠で存分に味わえる作品として、本作は今後も推していきたい一本である。

 

(2019年11月14日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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