第148回『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』

汚れ仕事は狼に任せろ!!

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『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
(Sicario:Day of the Soldado)
2018年:アメリカ
監督:ステファノ・ソッリマ


 公開時の初見では正直イマイチと思ったが、名画座枠で二度、三度と見ているうちに徐々に好きになってきた。脚本は前作『ボーダーライン』(2015年)と同じテイラー・シェリダン。監督は前作のドゥニ・ヴィルヌーヴから『暗黒街』(2015年)のステファノ・ソッリマに代わっているが、作品の全体的なトーンや主要キャラクターの設定・造形などは、シリーズ二作を通して極力ブレないようにコントロールされている印象が強い(テイラー・シェリダンの脚本が強いのだろうか)。

 前作は二人の「狼」(マットとアレハンドロ)に翻弄される主人公ケイト(エミリー・ブラント)の視点で描かれ、ひたすら冷酷な仕事人としての「狼」二人の恐ろしさが強調されていたが、続編である今作は「狼」二人の視点をメインに描かれているので、前作では細かく描かれなかった彼らの人間臭い部分にも触れられている。

 また、前作では、メキシコのカルテル(麻薬組織)が国境地帯の地下トンネルを通じて、アメリカ側に違法ドラッグを流入させている様子が物語の背景として描かれていたが、今作では、カルテルが違法ドラッグよりもさらにコスパの良い、密入国ビジネスに力を入れている様子が物語の背景として描かれている。カルテルが手引きする密入国者の中には、どうやらイスラム系テロリストも含まれており、アメリカ国内で無差別テロを起こしたテロリストたちも、カルテルの手引きによって密入国して来たのではないか? との懸念が米国政府内で高まる。

 このことから米国政府はメキシコのカルテルを「テロ組織」と認定し、密入国ビジネスに関係するあるカルテルを秘密裏に壊滅させるために、メキシコ国内で敵対する別のカルテルと抗争を起こさせ、共倒れさせようと目論む。と、ここで呼ばれたのがCIAの汚れ仕事請負人マット(ジョシュ・ブローリン)だ。マットは、カルテルどうしで抗争を起こさせるために、片方のカルテルのボスの子供を誘拐し、それを敵対するカルテルの仕業に見せかける、という手荒い裏工作を提案する。

 そしてこの作戦の実行にあたり、マットは前作でも手を組んでいたアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と再び手を組むことに。アレハンドロは、かつてあるカルテルに妻と娘を殺された元検察官で、カルテル壊滅のためならどんな手段をも厭わぬフリーランスのシカリオ(殺し屋)だ。

 マットとアレハンドロは腕利きの傭兵たちとスムーズに作戦を実行するが、移動中の彼らの警護に当たっていたメキシコ連邦警察の面々がカルテル側に買収されていたため、マットたちは思わぬ奇襲を受け、交戦の末、その場にいた連邦警察の面々を一人残らず皆殺しにしてしまう。

 米国大統領はこの「失態」によりメキシコ政府との関係性が悪化することを恐れ、さらにアメリカ国内で無差別テロを起こした犯人グループがカルテルとは無関係であったことが判明したために、一方的に作戦中止の判断を下す。突然の作戦中止に憤るマットだったが、さらにこの「失態」を全て目撃したカルテルのボスの娘と、作戦に関わった「部外者」であるアレハンドロを秘密裏に抹殺するよう命じられてしまう。前作ではひたすら冷酷にカルテル殲滅作戦を遂行し、自分たちの作戦のためにFBIのケイトまでをも利用していたマットとアレハンドロだが、今作ではそんな「狼」二人が雇い主である米国政府によって窮地に追い込まれる。

 目的のためならどんな手段をも厭わぬ「狼」にはなれないタイプのケイトが主人公だった前作に比べ、今作はまさに「狼」側が主人公なので、骨太なハードボイルド感覚は圧倒的に今作の方が強い。また同時に、そんな冷酷な百戦錬磨の「狼」二人が窮地に立たされるので、前作では見ることの出来なかった彼らの人間臭い素顔も、味わい深く掘り下げられている。

 物語の後半は、マットたちの部隊と別行動をとることになったアレハンドロと、この作戦に利用されたカルテルのボスの娘イサベル(イザベラ・モナー)の二人によるロード・ムーヴィー的展開になり、ここでアレハンドロの意外な過去や、完全に失われたわけではない良心的な部分も垣間見ることが出来る。前作とは大分違った印象を覚えるマットとアレハンドロの人間象の掘り下げ方は賛否あろうが、『ボーダーライン』という作品のサーガ的な展開(つまりは次回作があること)を期待した上で捉えると、この掘り下げ方はシリーズ全体に奥行きを与える良い要素だと思う。

 本作で特に気に入ったのはラストシーン。米国政府の(ある意味での)裏切り行為によって窮地に追い込まれたマットとアレハンドロだが、特にアレハンドロはそのせいで絶体絶命の煮え湯を飲まされ、そこからの今後の新展開とシカリオ(殺し屋)としての「継承」を匂わせる最高に渋いエピローグがラストシーンとして描かれる。

 全体的にかなり骨太なハードボイルド作品である本作だが、そんな作品中でも、あのラストは最もハードボイルドな匂いが立ち込めたシーンと言える。初見時は正直かなり物足りないなぁと思った本作だが、あのラストだけは初見時もシビレた。おそらく、あのラストシーンがあったからこそ、再見してみようと思えたのだろう。

 一作目も二作目も大好きな作品とは言い難いのだが、二作目のあのラストからの流れで、よりハードでハードボイルドな三作目を期待したい。両作の脚本を担当しているテイラー・シェリダンの監督作『ウィンド・リバー』(2017年)の激渋なハードボイルドさを見る限り、『ボーダーライン』三作目は彼が監督してもいいのではないかと思える。

 

(2019年3月28日)

プロフィール

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わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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