第142回『ヘドローバ』

怒涛の荒唐無稽エンターテイメント

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『ヘドローバ』
2017年:日本
監督:小林勇貴


 自主映画最新作『逆徒』、商業映画デビュー作『全員死刑』、早過ぎる自叙伝『実録・不良映画術』、そして早くも2本目の商業映画『ヘドローバ』……2017年は小林勇貴イヤーだ。

 2013年に『TOGA』『絶対安全カッターナイフ』で自主映画の監督としてデビューし、翌2014年には『Super Tandem』『NIGHT SAFARI』で注目を集め、2015年の『孤高の遠吠』が大きな反響を呼び、そして少し間を置いての今年の大躍進に至る。驚くべき速さで、しかも着実に映画監督としての腕を上げながら、一作一作、毎回違ったアプローチで独自性の強い作品を世に送り出してきた彼が、今回新たに世に放った『ヘドローバ』は、これまたとんでもない大問題作にして大傑作である。しかも本作は全編スマホだけで撮影しているというから驚きだ。

 富士宮のとある団地を舞台に、その団地を取り仕切るヤン兄弟(ウメモトジンギ&一ノ瀬ワタル)と彼らの祖母(竜のり子)、そして彼らの使い走りのようなことをして生計を立てているカズヤ(木ノ本嶺浩)とその妹ユリ(洪潤梨)を中心に、セックス、ドラッグ、バイオレンス、バイオレンス、祭り、バイオレンス、モンスター、バイオレンスetc……とブッ飛んだ展開が続く約80分。

 強盗、強姦、殺人、エロ、グロ、ゲロ、堕胎児、銭湯での大乱闘、麻薬カルテル式の歩道橋での首吊り死体晒し等々、犯罪と退廃のオンパレードで、それがハイセンスなカメラワーク(先述したとおり使っているのはスマホのみ)と編集技術によって、怒涛のエンタメ作品に仕上がっている。

 小林監督は一貫して暴力を描いてきたが、『Super Tandem』~『全員死刑』までは(※『TOGA』『絶対安全カッターナイフ』は私は未見)、エンターテイメントを貫く一方で、かなりシビアに「社会的関係性の暴力」を描き、地方都市の不良社会(あるいは家族内)における理不尽な圧力や搾取構造を、実録タッチの犯罪映画として生々しく暴き出す、というスタイルであった。

 それが今作『ヘドローバ』では、過去作の実録犯罪タッチからさらにもう一歩、いや、二歩、三歩……実質的には百歩くらい踏み込んだ、荒唐無稽のエンターテイメントに振り切っている。

 犯罪者や狂人たちがくんずほぐれつ暴力と暴力と暴力で絡み合う中で、映画自体も大幅に暴走し、終盤ではあるモンスターが爆誕、さらにしっちゃかめっちゃかなカオス展開へと突入し、最後にはさらっと第四の壁まで越えてくる。しかし終始ハチャメチャではあってもデタラメではない。

 先述した第四の壁の超越や、イニシエーションとしての親殺しなど、随所に古典的とさえ言える要素を意識的に取り入れている。荒唐無稽の中にも、温故知新の踏襲を忘れないのだ。こういう部分での落ち着きとバランス感覚の良さは、インタビューなどで度々「映画監督=職人」という自らの認識を語る小林監督の、まさに映画職人としての面が出ていると言えるかもしれない。

 デビュー作以来、一作ごとにメキメキと上げてきた映画監督としての腕前を存分に発揮し、より明確なエンターテイメント志向を最良の形で示してみせたのが、この『ヘドローバ』なのだ。

 

(2017年12月11日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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