第116回『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』

セックス、ドラッグ、マネー、マネー、マネー!!!!

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『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』
(The Wolf of Wall Street)
2013年:アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ



 Money, money, money
 Must be funny
 In the rich man’s world

         ABBA 『Money, Money, Money』


 本作は実在の金融狼、ジョーダン・ベルフォートの自伝を映画化したもの。手荒い悪徳商法で稼ぎまくり、カネに物言わせた乱痴気騒ぎを毎日のように繰り返しながら、因果応報の破滅街道を突っ走る主人公の破天荒な半生を、ハイテンションのブラック・コメディーとして描破している。

 ジャンルとしてはオリバー・ストーンの『ウォール街』(1987年)直系だが、作品全体のトーンというかテンションはスコセッシ自身の『グッドフェローズ』(1990年)そのものだ。マフィア映画である『グッドフェローズ』との違いは、殺しがあるかないかぐらいとすら言える。どこまでも突き抜けたハイテンションな暴力性と、それを乾いたタッチで戯画化してみせるブラック・ユーモアのセンス、そしてBGMを休みなくガンガン流しながら、切れ味鋭いスピーディーさで疾走するようにカットを繋いでゆく編集スタイルは、まさに『グッドフェローズ』を思わせる。

 ストーリー自体に特に目新しいものはない。顧客を騙して荒稼ぎしまくる成り上がりの悪徳証券ブローカーが、ついには歯止めが利かなくなって破滅の道をたどる……というもので、この因果な破滅譚を彩るのは、セックスとドラッグにまみれた乱痴気騒ぎに次ぐ乱痴気騒ぎ。ただもうひたすらに、主人公たちのファッキン&ドラッギンなデカダン生活が描かれる。

 金融ネタを扱ってはいるが、本作は特に専門的な知識がなくても楽しめる。私もこの手の知識は皆無だが、「資金洗浄(マネー・ロンダリング)」などの言葉を何となく知っていれば、特に問題なく見ることが出来る作りだ(詳しい知識ありきで臨んだ方がより楽しめるのだろうが)。

 本作でスコセッシが描いているのは、底なしの強欲に溺れた人間たちの醜態と、その先に待っている因果な破滅そのものであるが、しかしこれを陰々滅々と描いたり、あるいは説教臭く批判的に描くのではなく、主人公の滑稽なまでの剥き出しのバイタリティーを、世間一般の善悪の価値観を超えたところでの、ある種の人間的魅力として描いている。

 もちろん、主人公のやっていることは立派な犯罪である。人を食い物にした最低の詐欺行為だ。当然ながら、スコセッシもこれを肯定的に描いているわけではない。あくまで戯画化されたブラック・コメディーとして、欲に溺れた主人公を滑稽な存在として描いている。が、映画というものの一筋縄ではいかない面白さ、もっと言えば見世物としての娯楽性の本質は、本作の主人公のような下衆なパワフルさを持った人間に、我々観客側がほんの一瞬でも魅力を感じてしまうところにある。

 善良な人間にばかりでなく悪辣で卑しい人間にさえ時には魅力を感じてしまう、という見世物的快楽性は、創作物に触れる機会の多い人なら誰しも覚えがあるはずだ。犯罪者を手放しで賞賛するつもりは毛頭ないが、映画の中で描かれる犯罪者や狂人や破滅型のトラブルメイカーに、時として抗し難い魅力を感じてしまうのは、そういった露悪的な非日常世界へのある種の憧れの証左であると同時に、我々自身の裡にも少なからず存在する犯罪性や狂気性をそこに見出すからではなかろうか。

 そしてまた、「美男美女とヤりまくりたい」「豪邸に住んで美味いメシを食って高級車を乗り回したい」などという願望は、程度の差こそあれ誰しも少なからず持っている普遍的願望だ。本作の主人公は破滅的で非理性的な詐欺師でありながらも、先述したような願望を全て手に入れた人間なのだ。つまり、我々自身の裡にある、否定し切れない剥き出しの欲望を具現化した存在とも言える。

 救いようのない下衆な犯罪者を魅力的に演じるというのは、俳優としてかなり難しいことなんじゃないかと一介の素人ながら思うが、本作の主演であるレオナルド・ディカプリオはその点、本当に素晴らしい仕事をしている。『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年)での悪役は正直まだちょっと物足りない印象だったが、本作での弾けっぷりというかイカレっぷりは文句なしに最高だ。

 やっていることは一から十まで下衆の極みなのだが、スコセッシの卓越した演出力と、ディカプリオの体当たりで振り切った演技のおかげで、本来的に嫌悪感しか覚えなさそうな主人公のキャラクターが、見事に映画的魅力に満ちた存在に昇華されている。口を開けば「ファック、ファック」と喚き散らし、尻の穴にロウソクを突っ込まれた時はキャンキャン鳴いて喜ぶディカプリオの振り切った体当たり演技の素晴らしさもさることながら、まだ純真な若者だった主人公に、証券屋の下卑たマナーを叩き込む先輩を演じるマシュー・マコノヒーもこれまた最高だ。

 何だか下衆な部分しか誉めていないような気がするが、何はともあれ、スコセッシのような老齢の巨匠が、こういった下衆いパワー全開のブッ飛んだ作品をメインストリームで撮れるというのは本当に凄いことだと思う。『キング・オブ・コメディ』(1982年)、『グッドフェローズ』、『カジノ』(1995年)あたりのスコセッシ作品が好きな人にはぜひともお薦めしたい一本である。

 

(2014年12月8日)

プロフィール

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ニックネーム
わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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