第11回『第9地区』

異文化交流最前線


『第9地区』
(District 9)

2009年:アメリカ
監督:ニール・ブロムカンプ
 

 20年も30年も前に作られた映画にばかりうつつを抜かして、ここ最近の映画なんてほとんど見ていないのだが、たまには新しい作品も見なきゃいかんなと真面目にそう思わされた。これは公開時から気になってはいたものの、どうせ予想通りかそれ以下でしかないだろうと高を括ってスルーしていた。ところが、いざ蓋を開けてみればこれがとんでもない大傑作だった。

 舞台は現代。ある日突然、南アフリカ共和国の都市ヨハネスブルク上空に巨大な宇宙船が飛来。特に攻撃を仕掛けてくる様子もないので、船体に穴を開けて中に侵入してみると、多数のエイリアンたちが衰弱しきった状態で発見された。恐らく悪性のウィルスか何かが原因で上層部のエイリアンたちは全滅。生き残ったのは働きバチのような下っ端のエイリアンばかり。

 人類はエイリアンたちを「難民」として受け入れるが、肌の色どころか姿かたちの全く違う人類とエイリアンが共存出来るわけもなく、その昆虫型の見た目から「エビ」呼ばわりされて差別され、さらにはエイリアンたちのスラム化した居住区「第9地区」から彼らの兵器が見つかったことにより、住民たちはエイリアンの立ち退きを求め暴動を起こすまでになる。

 そしてエイリアンたちによる犯罪も増加したので、やむなく政府は「第9地区」から新たな土地にエイリアンたちを移住させることに。つまりは今の居住区から人里離れた僻地にエイリアンたちを強制退去させようというわけである。

 その強制退去の指揮を命じられた主人公ヴィカスは完全なる差別主義者。自己中心的で、エイリアンたちに対する同情なんてかけらもない人非人である。まずこの作品の素晴らしいところは、主人公にこの差別的で小物であまり頭の良くない、自分とその家族の幸せと、そして立身出世を人生の至高とするタイプの男をもってきたところだ。

 ヴィカスは今回の大役を任されたことにすっかり有頂天になり、喜々としてエイリアンたちの強制退去に乗り出す。中には反抗するエイリアンもいるが、しかしそのほとんどは問答無用の武力行使を前に為す術もなく、強制退去に無条件降伏せざるを得ない。

 そんな中、あるエイリアンの住居内で見つけた謎の液体に触れてしまったヴィカスは、直後激しい嘔吐に襲われ、帰宅してからもその症状はさらに悪化の一途をたどる。そしてそれはヴィカスの肉体の恐ろしい「変化」へとつながっていく……。

 手の込んだドキュメンタリー・タッチで終始テンポよく進行し、壮絶なアクションと社会的テーマを巧みに取り込んだ人間ドラマで魅せ、同時に最後まで先の読めないサスペンス・スリラーとしての展開も見事としか言いようがない。とにかく映画的な面白味を全て兼ね備えたと言っても過言ではない大傑作である(ラストがこれまたグッとくる)。

 本作が長編デビュー作だというニール・ブロムカンプ監督。ひょっとしたら21世紀のスピルバーグになれるかもしれない逸材だ。今後の活躍が大いに楽しみである。

 

(2010年11月24日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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