第106回『狂った野獣』

どん詰まり人生、明日なき暴走!!

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『狂った野獣』
1976年:日本
監督:中島貞夫


 「テメェら逃げたくねぇのか? 銀行強盗にバスジャックだろ。サツに捕まりゃあ、一生刑務所の臭い飯食わなきゃなんねぇんだぞ!! 分かったら後ろから付いてくるパトカーぶっ飛ばせッ!!」

 やはり70年代東映作品の台詞には、粗暴な中にも男心をメロメロにさせる「艶」がある。

 本作の筋は至ってシンプル。銀行強盗に失敗し逃げ場を失った二人組(川谷拓三&片桐竜次)が、路線バスをジャックして追っ手を振り切ろうとするが、そのバスには超ワケありな男(渡瀬恒彦)が乗っていたからさぁ大変!! というもの。

 おまけにバスの運転手は心臓に持病をかかえており、この緊迫した状況下で今にも発作を起こしそうな状態ときている。そんな中で、強盗犯とクセのある乗客たちがしっちゃかめっちゃかに押し合いへし合い絡み合い、バスはパトカーの群れを蹴散らしながら、白昼の街を暴走し続ける。

 幾人かの登場人物の背景に触れる回想シーンがちょこっと挿入される以外は、ほとんど最初から最後までカーチェイスとアクションのみで描き切った一本。

 全編に渡りハイテンションな笑いと血みどろのバイオレンスがくんずほぐれつ混交され、どこからどこまでが本気なんだか冗談なんだかまるで分からない。乗客たちも皆「か弱い被害者」としてではなく、各々が「すねに傷を持つ大人」として描かれているから、一癖も二癖もあって面白い(乗客の中で真っ当な正直者なのは幼い少年二人だけだ)。

 「善」対「悪」ではなく、どん底の悪党どもとすねに傷を持つ乗客たちが、欲望むき出し、狡猾さ全開で突っ走る、約80分のアナーキー狂騒曲。どん底にまで追い詰められた血まみれのアウトローというものは、いつの時代も銀幕によく映える。

 主演の渡瀬がカッコイイのはもちろんだが、本作における私的MVPはやはり拓ボン。ピラニア軍団随一の「殺られ役」であるが、今回はワルになり切れない気弱なチンピラを好演している。

 「ぶち殺しちゃるけぇ!! ぶち殺しちゃるけぇのぉ!!」と出刃を振り回してはみるが、肝の据わったオバチャンに怒鳴り返されるわ、渡瀬にはボコボコに返り討ちにされるわ、何だかんだ自分の方が痛い目にばかり遭って、後半はワンワン泣きじゃくる。

 特に最高なのは、小便を我慢出来なくなったガキんちょがいると、「我慢したら体に悪いけぇ」とバスの窓を開けてガキんちょに立ちションをさせてやるところ(でもってその小便が後続のパトカーにビシャシャーっと降りかかる)。ほんと、こういう役をやらせたらピカイチだ。

 静まり返った車内で、拓ボンが急に『南国土佐を後にして』をヘタクソな節回しで歌い出すところなんかは、なぜかウルッときてしまう。

 革ジャン姿で単車をブッ飛ばす星野じゅんもセクシー&ワイルドでめちゃくちゃイカスし、映画史に残る壮絶な「ギャグ死」を披露する室田日出男もこれまた最高だし、拓ボン以外の脇役陣も皆「記録よりも記憶に残る」活躍を見せているが、個人的にはフォーク歌手の三上寛がほんのワンシーンだが出ているのが嬉しいかぎり(しかも本人役で『小便だらけの湖』を歌っている)。

 やはり70年代の東映作品には独特のアナーキーさが横溢していると思うが、本作もまたそんな東映的アナーキズムを見事スクリーンにぶちまけた大傑作である。

 

(2014年7月22日)

プロフィール

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わがままコブラ
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生年月日
1984年5月2日
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