第101回『エリート・スクワッド2』

男たちの新たなる戦い

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『エリート・スクワッド −ブラジル特殊部隊BOPE−』
(Tropa De Elite 2 : O Inimigo Agora É Outro)
2010年:ブラジル
監督:ジョゼ・パジーリャ


 ページの頭にタイトルを入れられる文字数が限られているため、便宜的に『エリート・スクワッド2』と表記したが、正しい邦題は『エリート・スクワッド −ブラジル特殊部隊BOPE−』。前回ご紹介した『エリート・スクワッド』(2007年)の続編だ。

 前作は、情け容赦ないリアル・バイオレンスに満ちた超骨太ポリス・アクションだったが、今回は社会派の要素をより色濃くしたポリティカル・サスペンス寄りに仕上がっている。えげつない暴力描写は相変わらずだが、前作が「ストリートの暴力」を描いていたのに対し、本作はそのストリート(延いては国家そのもの)を裏で操る「権力構造(システム)の暴力」を描いている。

 舞台は前作から10年以上が経ったリオ・デ・ジャネイロ。前作同様、主人公兼語りべはナシメント。家庭を優先して、一度は軍警察特殊部隊「BOPE(ボッピ)」を退いたナシメントだったが、やはり彼の生きがいは戦い続けることであった。案の定、家庭生活は上手くいかずに離婚。妻子とは離ればなれになり、皮肉なことに、妻はナシメントの仇敵である市民運動家と再婚した。

 ボッピに戻ったナシメントは、中佐として隊を率いていたが、刑務所内暴動の鎮圧作戦中に無用な血を流させたかどで、州知事をはじめとする上層部から厄介払いされ、長年務めたボッピを去らざるを得ない羽目に陥る。しかし凶悪なギャングどもに容赦しないナシメントの姿勢が、意外にも市民たちから支持され、上層部も彼をぞんざいに扱えなくなってしまった。市民感情を逆撫ですれば、間違いなく選挙の票数に響くからだ。

 こうして、事態は思わぬ展開を見せ、厄介者であったはずのナシメントが、公安局の次官の席に着くという異例の大出世を果たす。そしてこれを最大のチャンスとばかりに、ナシメントは自身のポストをフルに活かし、ボッピの規模拡大と地位向上を推進。

 かつてない強大な戦闘マシンと化したボッピの活躍により、スラムのギャングは弱体化し、街に平和が戻ったかに見えたが、しかしここでナシメントに大きな誤算が生じる。

 スラムのギャングが弱体化したことにより、これまでギャングが仕切っていたビジネス(という名のあくどい搾取)を、悪徳警官どもが仕切り始めたのである。この悪徳警官どもは、非合法の武装集団「ミリシア」として、ギャング以上のあくどさでもって貧しいスラムの住人たちから金を巻き上げ、従わない者は白昼堂々、往来で撃ち殺すという傍若無人ぶりを見せつけるまでになる。ミリシアによる悪行を目撃した者も、報復を恐れ決して証言しようとはしない。

 そしてある事件から、ミリシアが州知事と直接つながっていたことを知るナシメント。案の定、上層部の闇に踏み込み過ぎた彼は命を狙われ、最愛の息子が銃撃に巻き込まれ重傷を負ってしまう。

 これまで、ギャングや汚職警官を相手に命を懸けて戦い続けてきたナシメントだが、本当に腐りきっていたのは、この国を動かす政治や権力そのものであることを痛感する。自分の本当の敵は、この国のシステムそのものだということに気付いたのだ。こうして彼は、この強大な敵である権力構造そのものとの戦いを決意する。


 1作目も圧倒的に素晴らしい作品だったが、2作目はさらに超骨太な社会派領域に突入している。暴力描写は相変わらずハードでえげつないが、本作ではナシメントと彼の息子との親子の絆がかなり丁寧に描かれおり、また、ナシメント自身の心の揺らぎ、あるいは年齢を重ねたことによる心境の変化などが、これまた丁寧に掘り下げられている。つまりは、人間ドラマの部分においても、前作に比べ、かなりヒューマニスティックに描かれている印象が強い。主人公であるナシメントの心境の変化が、そのまま作風の変化に反映されているといった感じか。

 2作目で(映画自体が)このような変化を見せるとは驚いたが、『エリート~』シリーズの2本を見た後に、パジーリャ監督のデビュー作である『バス174』(2002年)を見て、なるほどなと納得した。『バス174』は2000年にリオで起きたバスジャック事件を追ったドキュメンタリーだが、この作品には『エリート~』シリーズで監督が描こうとしているテーマの源流が扱われていると言える。

 つまるところ、ブラジルの現代社会におけるストリートの過酷で悲惨な現状と、その背景にある社会構造・権力構造そのものの歪みを克明に描き出そうとしているのである。この点において、『バス174』も『エリート~』シリーズ2本も全く同じ志向性を持った作品と言えるだろう(『バス174』が『エリート~』シリーズのプロトタイプと言っていいかもしれない)。ゼロ年代以降に作られた、リオのスラム街を舞台にしたリアル・バイオレンス巨編としては、『エリート~』シリーズ2本は『シティ・オブ・ゴッド』(2002年)と並ぶひとつの指標と呼べる作品ではなかろうか。

 

(2014年4月14日)

プロフィール

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わがままコブラ
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1984年5月2日
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