第5回:「女の都」

巨匠フェリーニ、夢の大セクハラ映画


「女の都」(La Citta Delle Donne)
1980年:イタリア 監督:フェデリコ・フェリーニ


 フェリーニ映画の登場人物たちは、いつだって俗っぽいところで右往左往している。代表作「8 1/2」以降は、夢も現実もクソミソにしたブッ飛んだ演出が独自のスタイルとなっているが、それが自己満足的な実験映画だとか、お高くとまった芸術映画にならない普遍性を保っていられる所以は、やはりその“俗っぽさ”にあるのではなかろうか。

 「8 1/2」にしたって、やたら“幻想的”だとか“狂気的”だとか形容されることが多いが、要はアイデアの枯渇した映画監督が、次回作を前にしてプロデューサーや脚本家、女優たちの板ばさみになり、私生活は私生活でまたカミさんと愛人の板ばさみになり、何の打つ手も思い浮かばず悶々とする様を描いているだけである。

 これは映画監督はもちろんのこと、中間管理職的な立場にあるサラリーマンだって充分共感できる内容だ。そして幻想的・狂気的な場面というのは、そんな八方ふさがりな主人公の愚にもつかぬ妄想の数々である(口うるさい脚本家を試写室で絞首刑に処すとか、カミさんと愛人が自分を挟んで仲むつまじく会話するとか、、、)。

 しかし、だからといってフェリーニが名前だけの巨匠だとか批判するつもりは毛頭ない。あるわけがない。だって映画はすこぶる面白いんだから。ことに“男の情けなさ”を描かせたら天下一品だ。

 思えば初期の作品からすでに情けない男ばかり出てくるような気がする。いい年こいたごくつぶし青年団を描いた「青春群像」はもちろんのこと、世界的名作の「道」にしろ「崖」にしろ、そしてフェリーニ映画には欠かせない“うだつの上がらない二枚目”マストロヤンニをフィーチャーした「甘い生活」や「8 1/2」、、、考えれば考えるほど、フェリーニ映画に“頼れる男”は出てこない。

 さてさて、そんなフェリーニがお送りする「女の都」なる一品。テーマはずばり「女」。しかもバリバリな男目線から描く「女」。となればもちろん「エロ」である。そして主演はもちろんマストロヤンニ!!

 監督がフェリーニで、作品のテーマが「女=エロ」で、主演がマストロヤンニ、、、あなたがもし普段からエロいことばかり考えている情けない男なら、これを観ずして何を観るというのか。これが「エマニエル婦人」じゃ気後れもするってもんだが、そこはイタリア映画の大巨匠にして世界映画史に残るマエストロ、フェデリコ・フェリーニの作品なのだから、周囲の良識派(特にレンタル屋の若い女子店員)の目も気にする必要はない。

 話の筋は有って無いようなもの。いつものごとく飛ばしまくるフェリーニ節を前に、われわれ観客はぼんやり鼻くそでもほじくって観ていればいいのである。

 冒頭、小田急みたいな列車で相席になったハクイねーちゃんの後を追って下車するマストロヤンニ。ねーちゃんはずんずん森の奥へ。マストロもずんずん森の奥へ。すると嬉しいことにハクイねーちゃんが木にもたれて待っているではないか。しかもチューしたげるとか言ってくるから、もうマストロうれしくなっちゃって目ぇつぶってタコさん口にしていると、待てど暮らせどチューして来ない。あれれと思って目を開けるとそこにハクイねーちゃんの姿はない。

 「ちくしょー、やられた!!」

 そこからマストロが女だらけの迷宮へと迷い込んでいくわけである。簡単に言えば中年男版「不思議の国のアリス」みたいなものだ。

 中盤、女だらけの世界にさすがに疲れ始めたマストロの前に、男性性のシンボルみたいな男、その名も“巨根博士”が現れる(日本で言えば梅宮“シンボルロック”辰夫といったところか)。でもってその博士の屋敷が秘宝館そのもので面白い。

 イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニが、超高速回転のこけし型バイブと戯れたりする(仕事選べよ)。イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニが、女の人の写真パネルの下にあるボタンを押すと、そのパネルの人のあえぎ声が聞こえる装置と戯れたりする(仕事選べよ)。イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニが、パイオツカイデーむっちりヒップな踊り子2人と戯れたりする(これは選んだな)。

 そして巨根博士の1万人斬り記念パーティーの最中、なぜかそこに居合わせたカミさんにばったり出くわすマストロヤンニ、、、この冷めた夫婦間のリアルすぎる会話が延々続くダレ場を少しく我慢してやり過ごせば、後はフェリーニ特有の見事な疾走感でラストまで一気に駆け抜ける。

 わが国ではどういうわけかお高くとまった芸術映画のイメージが強いフェリーニ作品だが、この下ネタ満載・夢満載の映画史に残る大セクハラ映画「女の都」のような楽しい作品が、もっとフィーチャーされてしかるべきだと思う今日この頃である。うんこち〜んちん!!





人生はお祭りだ!!



名優マストロヤンニ、本気で楽しんでおります
→ → →
http://www.youtube.com/watch?v=Fpp6dlEOkPw


                                                 (2009年7月2日)


プロフィール

プロフィール画像
ニックネーム
アンジー
性別
血液型
O型
生年月日
1984年5月2日
現住所
東京
自己紹介
政治経済スポーツ苦手。映画音楽本が好き。懐疑派の無神論者を標榜しつつも、テレビの占いなどで不安なことを言われるとかなり気にするタイプ。
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
32577
ページビュー数
56864