第19回:「第9地区」

異文化交流最前線


「第9地区」(District 9)
2009年:アメリカ 監督:ニール・ブロムカンプ

 20年も30年も前に作られた映画にばかりうつつを抜かして、ここ最近の映画なんてほとんど観ていないのだが、いや、たまには新しいのも観なきゃいかんですな。これは公開時から気にはなっていたのだが、どうせ予想通りかそれ以下でしかないだろうと高を括ってスルーしていた。ところがどっこい、いざ蓋を開けてみりゃあトンデモナイ傑作じゃありませんか。近年作られた映画では、ミッキー・ロークが落ちぶれた名レスラーを演じた「レスラー」('08)と並ぶ大傑作である。

 お話の舞台は現代。ある日突然、南アフリカ共和国の都市ヨハネスブルク上空に巨大な宇宙船が飛来。特に攻撃を仕掛けてくる様子もないので、船体に穴を開けて中に侵入してみると、多数のエイリアンたちが衰弱しきった状態で発見された。恐らく悪性のウィルスか何かが原因で上層部のエイリアンたちは全滅。生き残ったのは働きバチのような下っ端のエイリアンばかり。

 人類はエイリアンたちを“難民”として受け入れるが、肌の色どころか姿かたちの全く違う人類とエイリアンが共存できるわけもなく、その昆虫型の見た目から「エビ」呼ばわりされて差別され、さらにはエイリアンたちのスラム化した居住区「第9地区」から彼らの“兵器”が見つかったことにより、住民たちはエイリアンの立ち退きを求め暴動を起こすまでになる。そしてエイリアンたちによる犯罪も増加したので、やむなく政府は「第9地区」から新たな土地にエイリアンたちを移住させることに、、、つまりは今の居住区から人里離れた僻地にエイリアンたちを強制退去させようというわけである。

 さぁ、ここからやっとこさ物語は始まる。その強制退去の指揮を命じられた主人公ヴィカスは完全なる差別主義者。自己中心的で、エイリアンたちに対する同情なんてかけらもない人非人である。まずこの作品の素晴らしいところは、主人公にこの差別的で小物であまり頭の良くない、自分とその家族の幸せと、そして立身出世を人生の至高とするタイプの男をもってきたところだ。

 ヴィカスは今回の大役を任されたことにすっかり有頂天になり、喜々としてエイリアンたちの強制退去に乗り出す。中には反抗するエイリアンもいるが、しかしそのほとんどは問答無用の武力行使を前に為す術もなく、強制退去に無条件降伏せざるを得ない。そんな中、あるエイリアンの住居内で見つけた謎の液体に触れてしまったヴィカスは、直後激しい嘔吐に襲われ、帰宅してからもその症状はさらに悪化の一途をたどる。そしてそれはヴィカスの肉体の恐ろしい“変化”へとつながっていくのだった、、、。

 手の込んだドキュメンタリー・タッチで終始テンポよく進行し、壮絶なアクションと社会的テーマを上手く取り込んだ人間ドラマで魅せ、同時に最後まで先の読めないサスペンス・スリラーとしての展開も見事としか言いようがない。とにかく映画的な面白味を全て兼ね備えたと言っても過言ではない大傑作である(ラストがこれまたグッとくるんだなぁ)。

 本作が長編デビュー作だというニール・ブロムカンプ監督。ひょっとしたら21世紀のスピルバーグになれるかもしれない逸材だ。今後の活躍が大いに楽しみである。




このエビ野郎! 問答無用の強制退去だ!!



無駄な抵抗はやめろ!!



抵抗してきたエビ野郎をフライにしてやりました、どーぞ!!


、、、で、人(というかエイリアン)の痛みのわからない人非人にバチが当たる。


 

いやぁ、劇場に見に行けばよかったなぁ、、、。
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http://www.youtube.com/watch?v=d6PDlMggROA&feature=related


                                                (2010年11月24日)


プロフィール

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ニックネーム
アンジー
性別
血液型
O型
生年月日
1984年5月2日
現住所
東京
自己紹介
政治経済スポーツ苦手。映画音楽本が好き。懐疑派の無神論者を標榜しつつも、テレビの占いなどで不安なことを言われるとかなり気にするタイプ。
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